違う印象 7 プロレスの試合は、まぁ需要がないだろうから詳細は省くが、素晴らしい盛り上がりを見せた。 会場に足を運んだのは初めてという芹沢も大興奮で、足踏みで地鳴りを起こしつつ声援を送っていた。 「いやー、どの試合も面白かったな!」 「特に復帰戦は感動的であった」 「おう、俺もかなりグッと来たわ!」 二人でプオタ話に花を咲かせながら駅へと向かっていると…… 「芹沢?!」 背後で声が上がった。 振り向くと、金髪の不良男子が憔悴しきった顔で立っていた。 「……ああ、西野か」 「い、良いところで会った! 頼むっ、手を貸してくれ!」 「ア?」 西野と呼ばれた金髪君は、芹沢にすがって懇願した。 「キューちゃんが《シエル》のヤツらにやられてんだ!」 「マジかよ。《シエル》のトップって、お前ンとこのガッコじゃなかったか?」 「あいつら、どこの学校とか関係ないんだよ。キューちゃんと連絡取れないと思ったら、クラスのヤツからメール来て……数人に囲まれてこの先の店に連れていかれたって……」 金髪君は、拳が白くなるくらいギリギリと握りしめていた。 「芹沢に助ける義理なんかねぇってわかってるけど……ッ」 困った顔で俺の方を見る芹沢。 「友達、助けなくていいのか?」 「んー……友達っつーか、中学ン時の知り合い?」 「俺に出来ることがあれば手を貸すのもやぶさかではない」 「腕立てもできねぇヤツの手じゃなー。プロレス観た直後だからって気が大きくなってんじゃねーの?」 「残念だ。格闘技の知識だけは豊富なのだが……」 俺たちの会話を聞いていた金髪君は目を丸くして、俺を指さした。 「……もしかして、男?」 「ア? こいつのどこが女に見えンだよ」 もういい、芹沢。余計に悲しくなるから黙っていてくれ……。 [*prev][next#] [戻る] |