同じ趣味 5 「キモオータ君、その漫画1巻から持ってんの?」 「……持っている」 「俺さー、その漫画好きなんだけど最初の方を読んだことねーの。な、明日学校で貸して?」 「……」 芹沢はニコニコしながら俺と肩を組んできた。仲良しこよしのアピールだ。 「……悪いが、断る」 俺がそう言うと、芹沢の眉間にみるみるシワが寄り、「ア?!」と凄まれた。 「理由は3つある」 俺がその目の前に三本の指を立てる。 芹沢は意表をつかれたようでギョッとした顔をした。 俺は指を折りながら言葉を紡ぐ。 「ひとつ。俺はこれまで漫画を貸して、無事に戻ってきた試しがない」 昔貸した漫画は、破られたり汚されたり、下手したら借りパクされたり。大変不愉快だった。 「ふたつ。俺は身内でも友達でもないヤツとは貸し借りをしない」 これは本に限らず、お金でもそうだ。 「みっつ。俺は俺を『キモオータ』と呼ぶヤツを友達とは思わない」 当然だろ? そうきっぱり言うと、芹沢は口をパクパクして何か言おうとしたようだが、言葉が思いつかなかったようで、チッと舌打ちをした。 俺は、芹沢につきだした手で自分のアゴを撫でながら提案する。 「……ただし、そうだな。キミが今後一切俺のことを『キモオータ』と呼ばないのなら、うちに読みに来てもいいが?」 俺の言葉に芹沢は一瞬ポカーンとし、次第にパアッと顔を輝かせた。 「ギャハハ、友達じゃないヤツを家に呼ぶのはいいのかよ! そっちのがフツー難易度たけぇー」 「借りパクされるよりはマシだ。それに、同じ漫画が好きなのだから『仲間』だろう」 「仲間! ギャハハハ」 「あー、うるさいよ、キミ。今日これから来るか?」 「おう!」 不良『芹沢』が仲間になった! [*prev][next#] [戻る] |