同じ夢 13 「……ま、いいや。とりあえず出来なくてもいいから、腕立てしてみろよ」 言われるがままにうつ伏せになり、床に手をつく。 しかし、そこから1ミリたりとも身体が浮く気配はなかった。 「お前、全身くにゃくにゃだな。そういや姿勢もワリィから、腕力以前にインナーマッスルが足りねーんだ。まずは軽い負荷で回数こなすのがいいんじゃねーか」 「どうしたらいいんだ?」 「膝を支点にして腕立てしてみろよ」 「うむ」 悲しいことに、それでも身体は浮かなかった……。 「最終手段だ、ハイハイで腕立てしてみろ。これなら赤ん坊でもできんだろ」 「……ああ。しかし、これは完全に土下座だな」 「ギャハハハ、ホントだ。よし、ラクショーすぎてもアレだから、ちょい負荷かけっぞ」 そう言って芹沢は俺の背中を踏みつけた。 「ひゃんっ」 あっという間に俺は潰れた。 「……ど、土下座した俺を足蹴にするとは……」 「ワリィ」 再び四つんばいになると、芹沢が俺の身体をさすってきた。 「なーんか、どこにも力入ってねぇなぁ」 「どこにどう力を入れたらいいのかもわからない」 「ンなの、俺にもわかんねぇよ……」 そう言うと、芹沢は自分でも腕立て伏せを始めた。逞しい筋肉が踊り、羨ましい限りだった。 「……あー、腕の他にも意外と使ってるな」 腕立てから起きあがると、俺の胸や腹の辺りをペチペチ叩く。 「この辺の筋肉も意識して身体支えてみ?」 言われた通りにすると、芹沢が頷く。 「やっぱちょっと安定したわ。んじゃ、負荷かけっぞ」 そう言うなり、芹沢が俺の背中に腕で圧力を掛けてきた。 [*prev][next#] [戻る] |