同じ夢 12 「そういやお前、お礼に身体を鍛えろとか言ってたよな。どのレベルを目指してんのよ」 「……腕立て伏せができるくらい」 俺の言葉に芹沢は豪快に吹いた。 「マジか。マジで腕立てできねぇの?!」 「本当は拳法のリアル使い手になりたいが、高望みだと自覚しているからな。ちなみに、腹筋はかろうじてできる」 「そんなの女子でも出来るっつーの。ちょい腕相撲してみようぜ!」 そう言うなり、芹沢は床に転がって肘をついた。せかすように反対側の手で床をパンパン叩く。 敵わないことは火を見るより明らかだったが、仕方なくつき合うことにした。 「ほんじゃ、レディー……ゴッ!」 「きゃうんっ」 次の瞬間には俺の右腕は身体ごと右側に倒された。 「ちょ、待て。ちゃんと力入れろよ」 「……これでも全力だ」 「嘘だろ……。ちょい両腕でやってみろ」 言われるがままに、体重を乗せるように両腕で挑んだ。 「にゃっ……んくっ……」 俺がぐいぐい押しても、芹沢の右腕はぴくりとも動かない。それどころか、俺が苦労しているのを、芹沢はニヤニヤしながら見ていた。 「はい、しゅーりょー」 「ふにゃあっ」 その言葉と共に、またもや身体をコロンと倒された。 「……さっきからお前は、犬猫かっ」 「は? 何のことだ?」 「無意識かよっ」 芹沢は呆れた顔で俺を見ていた。 [*prev][next#] [戻る] |