同じ趣味 3 本日は俺の好きな漫画の新刊が、なんと6冊も出る日である。 財布へのダメージはデカイが、俺はニヤニヤが止まらない。 俺はバイトなどしたことはないが、友達と遊んだり飲み食いしたり、ということが皆無なので、毎月の本代は小遣いだけで何とかなっている。 なお、ゲームはクリスマスと誕生日のプレゼント、そして母が預かっている俺のお年玉、父のポケットマネーで買う約束になっているため、全て親公認。ギャルゲーなど当然無理である。 本屋の新刊コーナーに行くと、俺のお目当ての本は全て平積みになっていた。 キモオータなどと呼ばれる俺ではあるが、俺の漫画の趣味は決してキモくないと思う。 格闘番組やスポーツ観戦が好きな俺は、漫画やゲームもその手のものを好む。 ムチムチの姉ちゃんが男より強いなんていう漫画もあるけれど、リアルではない。 極めれば男の方が強いに決まっているのである! ……まあ、俺は弱いが。 ふっ、俺は極めていないので仕方ないのである。 俺は気を取り直し、平積み漫画の上から二番目をそれぞれ引き抜いた。 破れや汚れがないかを確認。よし、問題ない。 くるりとレジの方に向き直った瞬間、ドスン、と人にぶつかった。 「うおっ?!」 「す、スミマセン……あわわっ」 俺の腕の中からこぼれ落ちかけた漫画を、俺の目の前の男が咄嗟に受け止めた。 「ナイスキャーッチ、俺。……ん? キモオータじゃん?」 「……あ……」 俺の目の前に立っていたのは、真っ白な短髪に学生服を着くずした男。 もちろん加齢や苦労性による自然な白髪ではない。 情報処理科唯一の不良、芹沢だった。 [*prev][next#] [戻る] |