同じ趣味 2 八坂工業高校はほんの数年前まで男子校だったらしい。 不良が多いというのもあり、他のクラスはほとんど男ばかりである。 その中で情報処理科と建築科だけは女子の姿が(少ないながらも)確認できる。 ただし、その質はかなり違った。 建築科の女子はアーティスト気質というか、女王様っぽいというか、一匹狼の気むずかしいタイプが多い。 一方、俺の通う情報処理科の女子は、内向的で、えーと……。 ひと言で言えば、「俺と同族」という感じだ。 もちろん、あちらにしてみたら「同族」ってのは死ぬほど嫌だろう。オタ女子はオタ男子を嫌うヤツが多いからな。 こちらとしても、授業中にBL小説を書くような女子と同じ扱いをされると心外なのだが……。 ああ、別に覗こうと思って覗いたわけじゃない。 プリントが落ちたので拾おうと席を立ったら、後ろの席の女子が泡食ってパソコン画面を手で隠そうとした。 しかし、そんなことをされると逆に目が行ってしまうのは不可抗力であろう? 立ち上げられたテキストには、「あっあっ」だの「やぁん」だの「いっ、いくぅー!」だの、あえぎ声がたっぷり連なっていた。 授業中に濡れ場を書くとはいい度胸だな。 というか、完全にそれ18禁。俺らはまだ15歳……。 まあいい。俺は見なかったことにするから、そう睨むな。 オタ女子がそういうのを好むという現実を、俺はうちの姉貴で嫌というほど知っている。 今さらリアル女子に幻想など求めておらぬのだよ、ハッハッハ。 しかし、その翌日から俺は「太田」ではなく、女子のパソコン画面を覗き見したということでクラスみんなから「キモオータ」と呼ばれるようになった。 しかしだな諸君。呼び名など飾りですよ。偉い人にはそれがわからんのです。 これまで俺はちゃんとした友達らしいものがいた試しがないので、別に寂しいこともない。 むしろ、友達づきあいというものをする時間が惜しい。 お気に入りの漫画を読み、録画したテレビ番組を見て、ゲームで遊ぶ。その時間さえあれば俺は幸せなのである。 俺はまあ、実はそこそこ打たれ強いオタクであった。 [*prev][next#] [戻る] |