同じ趣味 12
母特製の煮込みハンバーグは美味しかった。
デミグラスソースがしっかり染みこんだハンバーグの中には、うずらの玉子がひとつずつ入っていた。
さらにはコーンスープ、ベーコンとクルトンを散らしたシーザーサラダ。
なんという贅沢。我が家的にこれは最上級のもてなしだ。
「芹沢君、おかわりもあるのよぉ〜」
「え、マジっすか」
芹沢がパッと顔を輝かせると、母もニコニコしながらハンバーグをよそった。
「うちのタカちゃんは食が細いから、芹沢君みたいにモリモリ食べてくれる人がいると私も作り甲斐があるわぁ。また食べにいらしてね」
母はうっとりしながらそう言った。
「……だそうだが、次はいつ来るんだ?」
俺がそう尋ねると、芹沢は驚いたように目を見開いた。
「ア? 迷惑じゃないのか?」
「なんだ、もしかしてもう来ないつもりだったのか。少なくともあのシリーズは全部読み切るつもりだとばかり思っていたが……」
「いやまー、お前がいいなら、毎日でも来ちゃおっかなー?」
芹沢がニヤリと笑いながらそう言うと、母が目を輝かせた。
「好きな時に来てくれたまえ。母も喜ぶ」
俺はそう言って、スープを飲み干した。
「ねぇねぇっ、芹沢君って不良サンなの?」
唐突な母の発言に、芹沢が豪快にむせた。
「……彼は毎日ちゃんと学校で授業を受けている。母に悪気が無いのは理解しているが、いきなり不良呼ばわりはどうかと思うのだが」
冷静な声で俺がそう言うと、母はカァッと顔を赤く染めた。
「ああーっ、そうよねっ、本当にそうだわ。だからいつもパパに怒られるのよねっ。芹沢君、ごめんなさいね!」
「い、いえ。中学ン時はわりとヤンチャしてたんで、この髪の毛はその名残っつーか」
「まあっ、まぁまぁっ、じゃあ喧嘩強いのかしらっ」
「そ、それなりです……」
たじたじになる芹沢をよそに、母はポワ〜ンとした表情で中空を見つめていた。
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