同じ道、同じ言葉 2
皆慈が復学するまでに、実はもう一悶着あった。
俺の父が、とうとうキレて芹沢家に乗り込んだのだ。
自分のことだというのに皆慈は興味なさげで、代わりに皆慈の叔父さんと、姉貴の彼氏で弁護士でもある児島さんが父に一緒について行った。
キレた、とは言ってもちゃんと大人の対応はしたようで、皆慈の今後の生活などについて話し合ってきたそうである。
最後までアイツの家族は知らぬ存ぜぬ勝手にしろとしか言わず、児島さんが「わかりました、後悔しませんね?」と銀縁眼鏡(仕事モード)をキラリと光らせた(らしい)。
その後すぐに児童相談所が介入し、皆慈の親の育児放棄が問題となったのだ。実名こそ出なかったものの母親絡みの事件も取り上げられ、そこそこ話題になった。
当の本人はそんなに大事になると思ってなかったようで、まるで人ごとのようにテレビを見ていたのだが。
「育児放棄って。俺、もう17歳だぜ?」
「まだ子供だろ」
俺が煎餅を囓りながら言うと、皆慈は微妙な顔をして黙り込んでいた。
結局、様々な救済措置を取るには何だかんだで親の承認がいるらしく、児童相談所の判断で皆慈の両親は親権を剥奪された。
それから、俺の父親と叔父さんとの間で、どちらが皆慈を養子にするかでもめた。だが、皆慈はどちらにも首肯しなかった。
――おそらく皆慈は、実の母親のことを気に掛けている。
母親を差し置いて、一人だけ幸せになっていいものか悩んでいる。何も言わないが、アイツはそういうヤツだ。
養子の話を断られて落ち込む父に、児島さんが優しげに声をかけた。
「お父さん、悲しまないでください」
「美晴君……」
「いずれ尊志君と皆慈君が結婚したら、皆慈君はお父さんの息子になるのですから」
「そ、そうだな!」
……おい、そこの二人。
最終的には、皆慈の叔父さんが法廷代理人となり、俺の両親が皆慈の里親となった。
これまでと生活はあまり変わらないが、里親には養育費が支給され、申請さえすれば奨学金も受けられるので、金銭的な心配は激減した。
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