違うアイツ 15
「言っておくが、俺のしつこさには定評があるからな。簡単に行方を眩ませられるなどと、ゆめゆめ思うな」
そう言って清は俺を抱き寄せた。
俺はその肩口に顔をうずめ、零れ落ちる涙を染み込ませる……。
「何度道を間違えても、安心して迷うがいい。きっと俺が何度でもキミを見つけ出す」
そんな清の真剣な呟きに、俺は思わず涙混じりに笑ってしまった。
「オットコ前だなぁ。俺が女だったら確実に惚れてるわ……」
「うっかりキミが性転換しようものなら、仕方ないから俺の嫁にしてやろう」
「あほか」
そして、心から笑った。
スゲーなお前。
お前がいるだけで、何か言うだけで、俺の頭にかかっていたモヤが晴れていくのを感じる。
ほんのさっきまでの俺は、生きてるようで生きてなかった。
俺は本当に何をしてたんだろうな……。
きっと俺は、お前の傍にいないと正しく息も出来ない。
力の限り清を抱きしめて、学ランの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。
「……あの、芹沢君? 太田君の顔色おかしくなってきたから、そろそろ離した方が」
かけられた言葉に振り向くと、一人の男子生徒が超至近距離でビデオカメラをこちらに向けていた。
カメラにもギョッとしたが、かけられた言葉の内容を理解して清の顔を見ると、顔の色が真っ青になっていて慌てた。
腕の力を緩めると、清はへなへなと床に突っ伏した。
「きっ、清、大丈夫か」
「あ、ああ……状況的に離せと言い出しにくくてな……。タイミングを逸して、危うく締め落とされるところであった」
「死なないで清」
「だから簡単に殺すなっ! それよりも小山内君、まだ撮影していたのか……」
清が睨むと男子生徒はニヘラッと笑った。
「それ多分、警察に参考資料で持っていかれるぞ」
「でも、ほら、太田君のお姉様にもご報告しなくちゃだし?」
「延々と男同士で抱き合う動画を見せられる警察官が可哀想だろうが」
……は……。
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