同じ過ち 11
飛鳥が、ごくり、と息を飲んだ。
「……随分と言うようになったもんだな。これまで黙って殴られてたヤツが」
「自分のことだけなら気にならないが、俺は他の人を巻き込むやり方は我慢がならない。反省したまえ」
俺の言葉に、飛鳥は冷たく言い返した。
「ふん、気が済むまで殴るなり蹴るなりすりゃいいだろうが。さぞかしスッキリするだろうぜ?」
「あいにく俺には友達を殴って喜ぶ趣味はない」
「ハ……。まだそんなこと言ってやがんのか。俺はお前なんか……」
飛鳥の目が揺らいだ。
「……お前だって俺のこと、嫌いだろうが」
「怒るのと嫌いなのは違う」
「小学校でクラスが一緒だっただけだろ……」
「そうだな。きっと俺より芹沢君との方が相性いいと思うぞ」
「気持ち悪いこと言うな」
げんなりした飛鳥の顔に、こんな状況だというのに俺はおかしくなって笑った。怒ってたはずなのだがな。
混戦の中で、林が「ライト消せ!」と叫んだ。
芹沢がメットを被っている以上、目眩ましは効かない。それならばむしろ暗い方がスモークの視界は悪くなると気が付いたのだろう。
ライトを消すと、窓のほとんどない倉庫はかなり薄暗くなる。
芹沢はヘルメットのシールドを上げた。
「おい芹沢っ、アイツ連れて逃げろ!」
ようやく芹沢の耳に、俺を指さす西山の声が届いたようだ。こちらを見て、ホッとするのが見てとれた。
――しかし。
「ぐあっ?!」
プシュッという噴射音と共に、芹沢が苦しみだした。芹沢の側にいた男が、防犯スプレーを手にしていた。
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