憧れ以上 9 私のその言葉に、安曇野さんはしばらくあんぐりと口を開けていたけれど、少しずつ笑顔になっていった。 「……そっか。そうかそうか! なるほどネ!」 安曇野さんはそう何度も頷いた。 「あ、でも、出版社のほとんどは短大生を取らないから、花椿女子短大じゃ無理かも……」 「はい、四年制の大学を目指すつもりです」 「なぁんだ、もう調べたんだ。……うん、探求心の強い青葉さんはきっと記者に向いてる。女の子には厳しい世界だけど、きっと青葉さんなら男に負けないヨ!」 安曇野さんはそう言って、私の頭をポンポンと撫でた。 私は安曇野さんにそうされると、何だかとても嬉しくなった。 この胸が温かくなる気持ちは何だろう。 ああ……そうか。 私は安曇野さんにきっとお父さんを重ねているんだ。 もしお父さんが今でも生きていたら、こんな風にやっぱり応援してくれたのかな。 こうやって頭を撫でてくれたかな。 「肉じゃがとごま和え、ちゃんと食べてくださいね」 ――私の、天国のお父さんの代わりに。 [*前へ][戻る] |