憧れ以上 8
「安曇野さんにお願いがあるんです。この間の公園までつき合ってもらってもいいですか?」
そうお願いすると、安曇野さんはとまどいながらも頷いてくれた。
公園までは、「掲載された記事ではどういう取材をしたのか」なんて話を聞きながら歩いた。
プライバシーの問題で詳しい話までは教えてもらえなかったけれど、とにかく地道な聞き込みと裏付け取りの日々だったらしい。
「変わった子だネ、青葉さんは」
「そうですか?」
「こんなオッサンの話、面白いかい?」
「はい、すごく!」
私がそう答えると、安曇野さんは目を細めて喜んだ。
「あ、ちょっと待ってて下さいね。すぐ戻りますから」
公園に到着すると私は自宅に走り、目的の物を持って安曇野さんの元へと戻った。
「これ、よかったらどうぞ食べてください!」
私は昨晩作り置きした肉じゃがと、いんげんのごま和えを少しずつタッパーに詰めたものを安曇野さんに差し出した。
「鶏の唐揚げとビールだけじゃ身体に悪いですから……」
安曇野さんは予想外だったらしく、とまどいの表情を見せた。
「で、でも……」
「安曇野さんのおかげで、夢が見つかったんです。そのお礼です」
「え?」
「私、記者になります」
そう、きっぱりと言った。
[*前へ][戻る][次へ#]
無料HPエムペ!