憧れ以上 7
木曜日の学校帰りに寄ったスーパーの総菜コーナーであの人に会えた。
「安曇野さん!」
「へッ?! あーっ、青葉さん!」
突然声をかけられて泡を食ったように振り向いた安曇野さんは、20%引きのシールが貼られた鶏の唐揚げを手にしていた。
「……唐揚げ、お好きなんですね」
「仕事明けの最高の贅沢だネ」
そうおどけるように安曇野さんは笑った。
「最近、週刊民潮読んでますよ」
「え、女子高生にはつまらないデショ、あの雑誌」
安曇野さんがちょっと複雑そうな顔をする。
「そんな事ないですよ。……正直な事を言えば興味ない記事もありますけど」
「だろうネー」
「でも、安曇野さんの最近の記事は目を通しています。すごく勉強になりました」
「本当に?」
私が頷くと、安曇野さんの表情はみるみる明るくなった。
「ああいう雑誌って、感想と言えば苦情ばっかり来るんだよネ。だからそんな風に言ってもらえるとすごく嬉しい」
「安曇野さんの記事でも苦情くるんですか」
「そりゃもー。何を根拠にそんな事を書いてる、ってね。これまでに何度裁判沙汰になったか」
「えっ、裁判……」
私はさすがに絶句した。
「ま、全部勝ってるけどネ! だってオッサンは正義のために戦ってるから、本当の事しか書かないんだ」
安曇野さんはニヤッと笑った。
「……今、ちょっと悪い大人の顔でしたよ」
「あれっ?!」
私の言葉に、安曇野さんは照れながらも爆笑した。
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