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 襖を取っ払って繋げた二つの和室奥には祭壇が据えられ、僧侶の読経が流れる中、入れ変わり立ち替わり人々の上げる焼香が、薄もやとなって部屋を覆っている。


 芹沢笑美の遺影が正面で微笑んでいた。遺体発見時の青ざめた顔とは違い、ふっくらと丸みを帯びていて、二十四とは思えないほど、あどけない。口角は柔らかく持ち上げられ、片頬に浮かんだえくぼが切なく涙を誘った。


 遺族席には喪主の芹沢大輔。笑美の母、新井咲季。そして母親の肩をいたわるように抱く妹、綾の姿。その隣で大輔の父親は苦渋の表情を浮かべ、母親は実の親の咲季より涙を流し、しきりとハンカチで目を拭っている。

 記憶の中にあるバイク屋の親父の顔は、今やすっかり老け込み、暗く陰って、あの鮮やかな夏の思い出とは、どうしても上手く噛み合わない。



 「この度はどうも」

 型通りなお悔やみを口にする宮北の横で、黙って遺族に向かい手を突く。顔を上げると芹沢大輔と目が合った。

 精悍な顔立ちの、故人と同じ年の若い夫。


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