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01.A ROOKIE


 春の天気は変わりやすい。昨日までの晴天とはうって変わって、今日は朝から空が泣いていた。


 この春、刑事課に転属になったばかりの鶴山緑は、陰鬱な天を仰いで溜め息を洩らす。

 やっぱり今日は、古い方の靴を履いてくるんだった……。

 この仕事は脚が命だと少々奮発したおニューの黒いローヒールは、足場の悪い駐車場に降り立った瞬間、泥水で汚れた。

 本格的に濡れそぼってしまう前に、小さな折り畳み傘を広げる。


 同じように、助手席から降り立った相棒の宮北刑事もまた、慌てて傘を差すと、ヤレヤレという笑みを緑に向けた。

 「じゃ、鶴山さん。行きましょっか」


 宮北は、新人の緑を「さん」付けで呼ぶ。緑が二つ年上でしかも女性である、というのが大方の理由だろうが。

 そろそろ三十路に手が届く彼は、刑事歴五年、警官七年目。一方、新米刑事の緑は、今年で勤続四年目だ。先輩後輩にウルサイ、完全縦社会の警察機構において、これは珍しいケースではなかろうか、と緑は思う。


 公用車を河川敷の駐車場に停めた二人は、幅の狭い、ひび割れだらけの土手の階段を登った。



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