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ぬすびとは何故、グローブには手を付けず、さくら達の写真とあの品だけを持ち去ったのだろう。宣戦布告のつもりか。自分はお前達の秘密を知っている、とでも言いたいのか。何故今になって……。
さくらは溜め息をついて堂々巡りの思考を断ち切った。考えても解らないものは解らない。それがこの一ヶ月で出た唯一の答えだった。
サラダを何とか完食し、ポットに残った冷め掛けの珈琲を、二つのマグカップに分け合って注ぐ。
考えるより行動だ。大輔を手伝って、笑美の周囲の人間を一人づつ探ろう。あの男に関係する人物も、何とかして洗い直してみせる。
笑美が警戒せずに家に上げる人間で、かつ、あの男と何等かの関わりを持っている人物……その辺りにきっと、犯人は潜んでいるのだから。
『イェー、じゃお次は俺の思い出の曲を一発! ジョージ・マイケルのカバーでヒットしただろ? リンプビズキットで〈フェイス〉』
聞き覚えのあるフレーズが流れ出た。思わず邦瀬と顔を見合わせる。耕太が大好きだったバンドの曲だ。
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