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 十年前の遠い春に彼を失って以来、四人は毎年、桜の季節になるとそれを掘り起こし、持ち寄ったスナップ写真を供えた。

 家の主だったさくらの祖母も八年前に他界し、それは今や誰も知らない秘められた儀式のはずだった。秘め事である必要があった。さくら達の誰一人として、他人に洩らす事など考えられない。



 なのに……。



 一ヶ月前、いつものように樹の下を掘り起こしボックスを開けると、毎年積み重ね続けた写真達はこつ然と姿を消し、剥き出しになったグローブだけが、ポツンと残されていたのだ。

 写真と共に供えられていた、ある戦利品も持ち去られていた。いったいそれがどのような意味を持つだろう。



 笑美はけたたましく泣き始め、彼女を抱きすくめたさくらの膝も震えた。大輔も邦瀬も顔を引きつらせ、しばらくそのまま無言で佇んでいた。





 その夜、四人は遅くまで話し合ったが、結局何も解らなかった。
 毎年掘り返しているので土は固くない。だが、一年の間に茂った下草が広がり、まったく掘り返した跡など見受けられなかったし、掘り返していった人物についても、まったく検討が付かなかった。

 


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あきゅろす。
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