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本当は怖がりで誰よりも繊細なはずだ。さくらはよく知っていた。思春期からの性格がそんなに変わってるはずはない。
支え合う事で心を強く保つすべを、いつの間に自分達は身に付けたのだろうか。
「サラダだけでも残さず喰えよ」
三百五十円と付いたシールの表示分だけ、賑やかに盛られたプラスチック容器を邦瀬が押しやる。
「何よ、あんたが変な事言うからでしょ」
さくらはフォークを振り回して抗議した。
「別に変な事じゃねーだろ。さくらは誰にも殺させねっつってんの」
「あーもう! やめてよ。そんな事言ったって、あんたの家族サービスには付き合ってやんないんだからねっ」
「え、俺んち一緒に寄るんじゃねえの?」
邦瀬の顔に不安がよぎった。
「……じゃあ大輔と合流して新井家行っとくか?」
薄々察しが付く。邦瀬はきっと、短時間でも彼女を独りにするのを怖れているのだ。
実際、通夜の晩はそのまま大輔の実家で、柩に寄り添って朝を迎えていたし、今回帰省してからまだ一度も、さくらは独りきりで過ごしてはいなかった。
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