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 身体が向こうに在っては手も脚も使えない。


 「あぁ、解ってる。勿論俺も出来るだけ都合付けて戻るさ。だから此処は俺達に任せて、さくらは向こういろって」


 しかし笑美の交友関係を探るなら、男達二人より自分の方が適しているはずではないか。
 邦瀬にしたって今はもう、雑誌モデルだけしてれば良かった気楽なアルバイト学生、とは違う。


 「絶対に嫌。そっちこそ、ドラマの仕事入ってるでしょ? 無理よ、時間なんて取れっこないわ。それに……今戻って一番危ないのは邦瀬、あんたなのよ?」


 「ドラマはチョイ役、降りても平気だって。第一さくらが戻るんなら俺も戻る。そんなん決まってんだろ。病める時も健やかなる時も、だ……」


 「そして死なば諸共ってわけ?」

 つい皮肉がこぼれる。


 「まさか。敵と刺し違えても、さくらは守るさ」

 邦瀬は三つ目のクロワッサンにパクついた。



 「……気分悪くなった」


 みぞおち辺りがむかむかする。清々しい朝の食卓にはそぐわない話題だ。
 さくらはすっかり冷めてしまったパンを、袋へと戻した。


 昨日の今日だ、あんな殺人予告を送り付けられてるこの状況で、よくもまあ、すました顔をしていられる。

 


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