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Tシャツに昨日と同じジーンズを引っ掛けた邦瀬がモーニング珈琲を入れる横で、ミニクロワッサンを五つオーブントースターへ突っ込む。
気持ちよく晴れているというのに、埃を被ったラジオの話では夕方からまた崩れるのだそうだ。
「げー帰りの高速はまた雨かよぉ」
邦瀬がぼやいた。
「なるべく早めにこっち発った方が良さそうね」
トースターがチン! と鳴って、さくらは皿をテーブルに並べる。帰りは邦瀬の車で、一緒に引き上げる予定だった。
「実家にも顔出して来たいし、そんなに早くは帰れねーよ」
熱いマグカップと冷蔵庫から取り出したコンビニサラダをさくらに渡し、彼はオークの椅子を引いて長い脚を投げ出した。
何事もない顔を装い、ことさらのんびりパンをかじる邦瀬を、さくらは改めてジッと見る。
「あたし、帰ったらすぐ予備校講師辞めてこっち戻るつもりよ」
キッパリ宣言すると珈琲へ伸びようとしていた邦瀬の手が止まった。
「……解ってんのか? 今こっち戻って来たら手ぐすね引いて待ってる奴がいるんだぜ」
「だから戻るのよ。逃げてたって何も始まらないわ。それにまさか大輔一人に犯人探しもさせられないでしょ」
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