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さくらは慌ててピシャリと窓を閉めた。紛れ込んだ蛾が一匹、バタバタと鱗粉を散らせて舞った。
グラスを三つ乗せた盆を持って居間へ戻ると、邦瀬はまだ、喰い入るように写真を見つめている。
「大輔、これってさ……」
「ああそうだ。去年、例のボックスに俺と笑美が入れといたやつだよ、確かに。それを二週間前、誰かが笑美んとこだけ破って、こんな風に送り付けて来やがったんだ。笑美は怯えて……けど心配するから、東京のお前等には知らせるなって」
彼は卓上にゴトリと肘を付いて頭を抱えた。大柄なはずの大輔の体が、何故か小さく思える。
「やっぱり誰だか心当たりは無いんだな?」
少し震えているが、邦瀬の声は驚くほど冷静だ。
「知るかよ! 判ってたらとっくにぶっ殺してる。俺を殺れないからって、か弱い笑美を……くそっ」
大輔は呻くよ声を搾り出した。
「大輔、落ち着いて。あのボックスの中身を持ち去った誰かなら、ターゲットは私達全員のはずでしょう?」
「……その意見には俺も賛成だな」
邦瀬がおもむろに、ジーンズの後ろポケットから折り畳んだものを取り出し、卓に放った。
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