[携帯モード] [URL送信]
page05


+back+ +next+
+chapter top+ +text top+
+novel+ +home+


 先に帰省したお陰で、通夜の晩には事情を知り得ている。あんなものを何度も見ていたくはない。
 それは明らかにこう告げているのだ。


 「これから不吉な事が起こるよ」

 と……。


 「君達は葬式をひとつ出す事になるだろう……楽しみだね」

 と……。





 キッチンで、買ってきた烏龍茶のペットボトルを冷蔵庫から取り出すと、飴色のグラスに注ぎ、嫌な気分を払うように一息に飲み干す。
 フウと蛍光灯を見つめ、ふと視線を感じて窓を見遣った。ギョロリとした目玉が二つ、確かに此方を見ていた……気がする。
 磨ガラスを引き、外を窺った。が、のっぺりとした漆黒以外、何も見つけられない。


 さくらは時々こんな風に、六年前葬ったはずの男の気配を感じた。とっくにウジが湧き、土中で朽ちているはずのまなこが、気付くとドアの隙間や隅の暗がりから、恨みがましくジッと自分を見つめているのだ。


 闇に目を凝らしていると、たちまちヘドロのような悪夢が触手を伸ばして襲ってくる。首に絡み付き、闇の先でぱっくりと口を開ける狂気へと、彼女を引っ張る。

 


+chapter top+ +text top+
+novel+ +home+


+back+ +next+

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!