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昨夜大輔がさくらの家を訪れたのは、葬儀後居残った親戚を全て送り出した後で、もう夜もずいぶんと更けていた。
彼はやって来るそうそう、前置きもなしにいきなり、差出人不明の白地封筒を座卓に投げて寄越した。
彼等が暮らしていたアパートに程近い、郵便局の消印が押してある。日付は二週間前のものだった。
邦瀬が無表情で中身を確認する。半分に破られた写真が一枚。披露宴のケーキカットのシーンだ。
笑美がその華奢なフォルムにぴたりと沿う純白を纏い、リボンと花で飾られたナイフを握っている。
細い指先が大輔のスポーツマンらしい大きな手に支えられて華やぎ、いつもの優しい瞳の黒は幸せにほんのり滲んでいる……はずだった。本来ならば。
その写真には首がなかった。
首から上は、どす黒い血でべったりと塗り消され、細かく砕かれたガラス片が散り散りに貼り付けられている。
生臭い嫌な臭いが、魚の血であろう事を教えていた。
裏には〈南無阿彌陀佛〉の札。
経典からコピーでもしてあるのか、旧漢字の筆文字が妙に不気味で禍々しい。
さくらは写真から目を逸らし、席を立った。
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