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「で、鶴山さんはどう思う?」
食後の一服に満足気に目を細めつつ、宮北が問うてきた。
降り止む気配のない空模様とはいえ、ゴールデンウィーク真っ只中の昼下がり、ファミリーレストランはそこそこ混んでいて、おっとりとした宮北の声は、やや聞き取り辛い。緑は珈琲カップをコトリと置いて、向き合った。
「腑に落ちない点がありますね」
何かが胸に引っかかっている感じなのだ。
宮北の目が好奇心でわずかに見開かれる。
目……そうだ、目だ。
緑は、先程の刃崎さくらを思い出していた。あの憎しみに燃える激しい瞳。
警官嫌いの若者など、交通課でそれなりに見慣れている。仲間の事故死で荒れまくった非行少年もいたし、更正させようと心を砕いても、結局、当てつけ自殺してしまった少女もいた。だが、あんな目は今まで見た事がない………いや、一人だけ思い当たった。芹沢大輔だ。
あの二人に共通する怒りはいったい何だろう。芹沢笑美の死? 警察への不信?
それだけではない何か……内に秘めた強い感情を垣間見た気がした。
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