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駐車場前でふと、長身の男とすれ違った。
弔問客らしい。傘で顔はハッキリ見えないが、思わず振り返りたくなるほど華のある空気を纏っていた。田舎ではまず見かけないタイプだ。その男の物なのだろう、来た時にはなかった品川ナンバーのコルベットが緑達の車の脇に停めてある。淡い水色の流線がくすんだ景色を弾いていた。
ピュウと宮北は軽く口笛を鳴らしてナンバーを手帳に書き留める。
「はぁあ腹減った。鶴山さん、ファミレス寄りましょうよファミレス」
車に乗り込みながら言う。
「宮北さんお弁当あるでしょ。ちゃんと食べて帰らないと奥さんに叱られるんじゃないですか?」
半折りにした傘を後部座席の足元に捨て置き、緑はブルンとエンジンキーを回した。
「あれは夜食べるからいいの。どうせ今日は書類片付けなきゃならないから遅くなるし」
「五月ですよ。何時間も放ったらかしにしたら」
「流石主婦は細かいなぁ。大丈夫、ちゃんと署の冷蔵庫に入れてきましたっ」
口を尖らせ、わざと子供っぽく拗ねてみせる。つられて緑もクスリと笑った。
「宮北先輩の驕りなら勿論私は全然オッケーですけど?」
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