[携帯モード] [URL送信]
page06


+back+ +next+
+chapter top+ +text top+
+novel+ +home+


 鑑識車とパトカーが現場へ急行すると、アパートの下には救急車が一台止まり、既に人だかりが出来ている。野次馬を追い払う救命士の姿が見えた。


 若い女が浴室で手首を切って死んでおり、発見した夫が救急車を呼んだのだという。110番通報は駆けつけた救命士からなされたものだった。


 鑑識作業が終わり黄色いテープを越えて部屋へと足を踏み入れた緑は、噎せ返る血の匂いと、そのあまりに凄惨な光景に思わず胃液を戻した。


 バスタブからは流しっ放しの水が溢れ滴り続けていた。
 紅く染まった水面には膝を折った小柄な女が死んだ金魚のように口を開け、ぷかりと浮いている。


 夫は呆然と立ち尽くしたままで質問にもまだ上手く応えられない状態だ。救命士の話だと、赤ん坊は保護されるまで居間の隅に捨て置かれ、狂ったように泣き続けていたという。


 芹沢笑美の遺体はいったん市立病院に運び込まれた。医師による検案が行われるとの事で、

 「立ち会っといて」

 と緑は上司に言われた。

 医師を追って部屋に入ろうとした処、誰かに肩を押さえられ振り向く。とそこには、黒いゴム長靴を目前にぶら下げた宮北の苦笑する顔があった。



+chapter top+ +text top+
+novel+ +home+


+back+ +next+

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!