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明らかに何かを焦がした不快な臭いが部屋中に満ちていく。
 
その不快さに思わず顔をしかめたくなるが、それも出来ずにただただ我慢をするだけ。
 
ドス黒く無様に変わり果てたその姿……元々の存在が何かわかっているせいか、悲しみを超えた空虚感が私を襲う。
 
恐る恐る触れてみれば、ボコボコした物が指先に当たり、その感触に思わず顔をしかめてしまった。
 
どうしてこんなことに……醜く変わり果てた黒い塊に対して、なんと表現していいかわからないが、同情に近い感情が生まれる。
 
だが、同情なんてしている場合じゃない。
 
私は今からこれを……食べなくてはならないのだから。
 
「なぁ、どうしたんだよ。食わないのか?」
 
これを錬成……間違えた、作った当人のアーサーさんはこの黒い塊になんの疑問もないのだろうか。
 
どう見ても食べられそうにないのに、私にこれを『食べろ』と勧める。
 
い、いえ……世界は広いですからね。食文化に違いがある、それはよ〜〜〜〜〜〜く存じております。
  
存じているつもりで……いるんですが。
 
これは絶対焦がしてる絶対失敗してる絶対不味い絶対お腹壊す絶対……。
 
「いえ、頂きます。美味しそうですね。」
 
アーサーさんの顔が心なしが嬉しそうになった。
 
私のばかぁっ!
 
心で自分自身を罵倒しながらも、表面では笑顔で黒い塊を手に取る。
 
「ま、まぁ……別にお前の為に作ったわけじゃないから。その……嫌なら捨ててもいいんだからな!」
 
なるべくこちらに目を合わせぬように顔を背けて、アーサーさんはそんなことを言う。
 
いつもそうだ。照れくさいのかアーサーさんは心にもないことを口にする。
 
態度に表れているからある意味わかりやすい。この本来スコーンになる予定だった黒い塊は私の為に作ったもの。
 
この気持ちを踏みにじることは私には出来ない……。
 
大切な友人が好意で作ってくれたんです、それを踏みにじるわけには……!
 
私は笑顔でもう一度『頂きます』と言って、黒い塊に齧りついた。
 
口の中に広がるのは……。

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あきゅろす。
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