九龍受な文章
皆守ルート1
「私、甲太郎がいちばんすきー。だから、甲太郎のいうことをききます。」
九龍の台詞が終わるか終わらないかのうちに、両脇から盛大な舌打ち音が飛んでくる。2人とも正直なこった。
「そうか。じゃあ、1対1でやりあうことになるが……悪く思うなよ。」
最早脇役状態の2人は無視して、俺は九龍の目を見つめてそう言った。
俺は真剣に言ったつもりなんだがな……いや、つもりではなく、真剣だった。
だが、九龍はにこーっと笑って頷くだけ。俺の真剣さはどれだけ通じたんだろうな。
思わずため息をつきたくなる状況だったが、改めて銃を握り直した九龍の顔に、俺はため息を吐くどころか、逆に息を飲む。
「いたくても、おこらないでね。」
九龍の銃はまっすぐ俺の額を差している。俺は自分でもわからないうちに、『あぁ』と頷いていた。
すると、その瞬間何故か正面からではなく、両脇から同時に矢と銃弾が飛んできた。
「なっ……! 何しやがる!」
慌てて身をかがめてそれを避け、俺を犯人を睨みつける。
「おや、痛くしても怒らないんじゃなかったのかい?」
「そうですよ。皆守くんは嘘つきですね。」
日本じゃ禁止されてる物をぶっ放した奴と、確実に人に向けてはいけないものを放った奴は、いけしゃあしゃあと自分を正当化する。
なんでこいつら……さっきまでお互いいがみ合ってたくせに。
まるで、タッグ組んだみたいに嫌なチームワーク発揮して、俺を攻めやがる。
「私と甲太郎でたたかうのー。じゃましないでー。」
不機嫌そうに眉間に皺を寄せる九龍に、素直に感謝出来ないのが複雑なところだ。
感謝した相手を倒さなくちゃいけないからな。
だが、感謝がどうこう思っているのも束の間、口の減らない2人は反省する様子もなく、口を開いてペラペラと色々並べ立てる。
「別に邪魔はしてないさ。僕が個人的にあいつを狙っただけ。九龍とそいつは1対1で戦うと言ってたが、僕には関係のない話だから、ね。」
喪部が口の端を上げてそう言いながら、ライフルに弾を込める。
九龍は喪部の言葉に難しそうに唸るだけだ。それに援護射撃するかの如く、神鳳も口を開く。
あぁ、もうダメだ。九龍じゃ勝てない。
「僕達だって皆守くんを助けたいんですよ。龍さんの邪魔はしないようにしますから、許してもらえますか?」
絶対嘘だ。助けると称して俺を攻撃したいだけだろ。舌打ちしてた時、盛大に殺気放ってたくせに。
頷くんじゃない。あいつら、俺の言うことなんざ聞きやしないんだ。
お前の言うことしか聞かないんだよ。だから、そこでお前が了承したら、俺は3対1という理不尽なバトルをする羽目に……。
「いーよ。」
よくねええええええっ!!!
頭を抱えて叫びたくなる程のショックを受けるが、実際に頭を抱えて叫んでいる暇はない。
九龍の了承を得た2人の目がギラリと光った気がした。
喪部はともかく、神鳳は目を閉じているのに、何故。
「だってさ。《墓守》も大変だね。」
喪部が口の端を上げて笑い、わざと金属音を立ててライフルを構える。
「覚悟は出来てますよね?」
神鳳が読めない笑みのまま、しなやかに重さを感じさせずに弓を引く。
「みんな、甲太郎のこと、たすけてくれるって。よかったねー。」
九龍が無邪気な笑顔を向け、しっかりと拳銃を握り銃口を俺に向ける。
三方向からそれぞれ3つの武器が俺に狙いを定め、じりじりと俺を追い詰める。
種類の違いはあるが、三方向から笑顔が向けられている。
俺はダメ元で藁どころか、納豆の糸を掴む思いで九龍に尋ねた。
「なぁ、九龍。俺達……親友だよな?」
3つの中で一番眩しい笑顔がさらに眩しくなる。
「うん。だから、みんなでたすけてあげるの。」
その瞬間、残り2つの笑顔も別の意味で眩しくなった。
阿門、すまん……俺、墓どころじゃないわ。
皆守ED 終
コメント
10年2月出した本の一部です。
ほとぼりが冷めた頃に、他のキャラのEDも載せます。
とりあえず、甲ちゃんフルボッコEDです。
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