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どりーむな文章
謙也さんが激しく愛される話
※※※R18ハード寄り、苦手な人は閲覧注意



昼休みやと言うのに空はどんよりで心なしか教室の中も暗く、会話するにも少し支障をきたす程うるさい雨はまさにバケツをひっくり返したみたいや。

早く帰りたいが、その帰る気力すら失くさせる酷い天気に、スマホに滑らす指の動きも鈍くなる。

「空めっちゃ暗いな、天気予報どうなん?」

「……大阪府全域大雨警報に雷注意報っすわ。」

雨のせいで必然的に人数が増えてしまい不快指数も高くなる教室の中、そんなところを訪ねてきた下級生の俺らには少しアウェイ。

俺が読み上げる画面には並んでいるのは雨どころではなく、雷のマーク……ホンマにどうしようもない天気や。

窓から空を眺めながら天候を尋ねた部長は困ったように顔をしかめる。

「これは練習どころか、さっさと帰らなあかんレベルやな。」

はぁ、とため息をついて、部長がもう一度窓に目をやる。遠くから見てもドロドロのグラウンドが俺の目にも入った。

〜、今日練習なしやわ。」

部長の隣の席で俺達のやりとりを見ていた謙也さんが、やれやれと言わんばかりに肩をすくめながら、俺の横で黙々と菓子を啄んでた綾辻に声をかける。

クラスメイトの綾辻は俺と同様アウェイの立場やと言うのに、それを気にするどころか逆に機嫌良さそうに謙也さんの台詞に応える。

「じゃあ、今日は一緒に遊べるんですね、やったあ!」

無邪気にパンと両手を合わせてキャッキャと喜ぶ綾辻に、部長は複雑な表情を見せる。

「うーん……嬉しい気持ちはわかるけど、目の前で『やったあ』は流石に困るわー。」

そう、テニスの練習が出来ひんってことは、俺らにとっては損失でしかないのに、嬉しそうにされるのはKY以外何物でもない。

やけど、部長が言う様に綾辻の気持ちはわからんでもない。

普段は練習やら試合やらなんやらとあるせいで、こいつは彼氏である謙也さんとは、あんまり二人きりで会うたり遊んだり出来てへんようやから。

昼休みに友人とも言い難い仲の俺について来て、アウェイな上級生の教室に入って、関係のないテニス部の連中の話を横で聞いていた理由はこれ。謙也さんに会いたいから。

「あ、ごめんなさい。……しばらく謙也さんで遊べなくて、つい。」

しゅんと申し訳なさそうに目を伏せる一途な彼女の口からは、思わず『ん?』と首を傾げてしまう台詞が。

「謙也さん『で』遊ぶんや。」

「はは、めっちゃ尻に敷かれてるやん。」

引っ掛かった助詞を強調して、綾辻の台詞をわざとらしく復唱すると、部長が笑いながら謙也さんに視線をやった。

「まぁでも、お互い楽しんでるから。今日はいっぱい遊びましょうね!」

花が咲いたように笑うってのはこれのことなんやろうか。

口にすると確実にバカにされそうな表現。それが似つかわしい程の無邪気さを振りまく綾辻にも、謙也さんは芳しい反応を見せへん。

「あ、あぁ……。」

部活の最中にも鬱陶しいくらいノロケをかます謙也さんがやけに大人しい。

「一緒に遊ぶの嫌ですか?」

「そっ…そーゆーわけ、ちゃうけど……。」

心配そうに顔を覗き込む綾辻からも、ふいっと顔を反らして俯く。

あからさまに様子のおかしい謙也さんに、部長がちょっと呆れたように肩をすかして笑った。

仮にもテニス部員がテニス出来ひんのを喜ぶのはアレやから、謙也さんなりに気ぃ遣ってんねやろ。と判断したんやろう。

「ええやん。明日祝日やから学校も開いてへんし。折角やし、二日連続で遊んできいや。」

「やったあ! 二日もあったらいっぱい遊べますね、謙也さん。」

綾辻がまた嬉しそうに両手をパンと合わせた。こうやって手を鳴らすのは、こいつが最上級に嬉しいときのクセなんやろう。

その様子に部長が『ホンマ、謙也のこと好きなんやなぁ』と微笑ましげに呟いていたが、当の謙也さんは彼女の様子とは対照的に、複雑な顔でご機嫌な綾辻を見てるだけやった。

…………なんか、変やな。







――帰るときに気付いた。携帯がない。多分昼休みに3-2で使うて忘れた……と思う。

「……誰かに盗られてなかったらええけど。」

警報は外れることなく、雨はずーっと降ったまま。それどころか、暗い空は時々光ってはゴロゴロ鳴りだしている。

そんな天気なんで、教室の中は誰もおらん。うちの教室も、謙也さんらの教室も。

ここなんか先生が面倒臭がりなんか、教室の前の戸だけ鍵閉めてある。後ろの戸は内側から鍵をかけるタイプで、鍵は閉まってなかった。

後ろは空いてるってことは、いちいち職員室に鍵を借りに行かんでもええってことやな。おかげで探しやすいから助かったわ。

さて、部長らへんが拾って、机の中にでも保管しといてくれてたら楽なんやけどなーっと、まずは部長の机を覗いてみる。

…………流石や無駄がない、なんも入ってへん。手を突っ込んでも、ゴミひとつない。

と、なると次は謙也さんの机。そこにもなかったら、職員室でも行くか。

なんかゴチャゴチャしてそうやなぁ……とか考えながら、俺は謙也さんの席に向かう……と。

「どうしてそんなに冷たいんですか! ひと月ぶりに遊べるから……私、楽しみにしてたのに!」

廊下からは思わず顔をしかめてしまうような女の怒鳴る声。いや、怒鳴るって言うよりかは、爆発した感情をぶつけてるような感じ。


それに対して何か返しとんのも聞こえるけど、何を言うてるかまではわからへんな……っていうか、こっちに近づいてきた。

厄介事に巻きこまれるんは勘弁、と思わず教卓の下に隠れたのはええけど。この判断は間違いやったかもしれん。

「遊ぶて……どうせ、どっちかの家でいつも通りのことすんのやろ。」

ちょっと乱暴にガラリと開けられた扉からまず入ってきたのは、非常に聞き覚えのある声の主。今から机の中を漁ろうと思ってた相手やな。うんざりと言わんばかりにテンションが低い。

「はい、私のお部屋にどうぞ。」

それに続いて入ってきたんは、また聞き覚えのある声。もう機嫌は直ったんか、さっき怒鳴ってたんが嘘みたいに普通に戻ってる。まぁ、この学校で標準語喋る奴も限られてるし、声の主は容易に想像つく。

けど、昼間様子が変やったんはまだ続いているのか、謙也さんのテンションは低いまま。

「……嫌や。」

「私……そんなに避けられるくらい、嫌われてしまったんですか?」

か細い声で悲しそうに綾辻が尋ねたと同時にカチャリ、という音がした……あいつ、鍵閉めよった……。

逃げる手段が減った、いやなくなった。だって、教卓側の鍵は既に先生が閉めてたんやから、俺はあいつらと同じところから入ったんやから。

花やと思って愛でとったんは毒草やった。俺は静かにそんなショックを受ける。こいつ天然やんなーとか思ってただけに、余計ショック。

無邪気やと思っていた彼女は黒かった。けど、謙也さんは気づいてないんか、悲しそうな彼女に慌ててフォローを入れる。

「ちがっ、違うって。の事は好き……やけど……。」

後ずさるようにガタンとどこかの席に座った謙也さんの語尾が、だんだん小さくなっていく。何しとんねん、ホンマヘタレやこの人。

大きくため息を嫌味ったらしくつきたいが、バレると厄介やから俺はため息を飲み込む。

「今日の謙也さんはワガママさんですね。昼間からずうっとそんな態度で……いつもはもおっと素直で可愛いのに。」

カツカツと足音立てて、『ワガママさん』って表現が余計に何かを増幅させる、妙に威圧感のある言い方で綾辻が謙也さんに迫る。

「だって……俺かて、それなりにプライドっちゅーもんあるっ…んっ…!」

謙也さんも負けじと言い返すが、台詞はリップ音で中断された。教室で何しとんねん、腹立つわ。

「プライドって? どんなのですか?」

綾辻の声は昼間聞いてた無邪気でふんわりした声と変わらない。

よくある可愛いぶりっこが本性出して声を低くして喋り出したわけでもない、のに……どこか逆らえない雰囲気がある綾辻の台詞。

「え、と……お、俺の方が年上、やし…男やし…、リード、せな、あかんから……ううっ。」

それに引き換え、謙也さんの声は聞いたことない声で泣きそうに、だんだんと上ずって……嘘やろ、こいつら……。

「いいんですよぉ、他の人なんかと比べなくて。私は謙也さんが好き、謙也さんも私が好き。これでいいじゃないですか。」

発する言葉すべてが花びらになって零れていくような甘い声で、綾辻は謙也さんを優しく慰める。

のも束の間、零れた花びらは針になって、今にも泣きそうやった謙也さんの胸にぷすぷす刺さっていく。

「それに私、年上らしくも男らしくもなくって情けない、ヘタレって言われて笑われてる謙也さんが、だあい好き。それじゃダメですか、無理に背伸びしたって辛いだけですよぉ。身の丈に合わない行動したって、私が面白がるだけですよぉ。」

大人しい無邪気な花が零れるようなトーンは甘えるような口調で辛辣な言葉を吐いていく。

その合間合間に聞こえてくるギリギリで泣くのを我慢してるような、ひゅっと息を吸い込む音に……なんか俺も辛くなってくる。

普段俺らが謙也さんをからかって遊んでるとき、こいつは微笑ましそうに見てたフリして、内心さっきみたいにほくそ笑んでたかと思うと。

「私、そうやって我慢してる顔、好きです。」

そう言って布が擦れる音がしたと思ったら、次はガタガタと机か椅子が揺れる音と聞いたことない甘ったるい声。

「んあっ! あ、もっ、よごれっ…っ…うんっ…!」

「そうですね、このままだと帰るとき大変ですし。じゃあ、脱いじゃいましょう。」

「やっ、やめえや…こんなん誰かに見つかったら……。」

「電気もつけてないし、鍵も閉めてます。謙也さんが大きな声出さなかったら、全然問題ないですよぉ。」

問題しかないし、大問題じゃこのボケ! と狭い教卓の下から飛び出して叫びたい……!

何をする気やこいつら。音と台詞で想像はつくけど、言葉にすると負けな気がするから絶対言葉にはせえへん。

まだ痴話喧嘩でも別れ話でもしてくれた方が、我慢出来んくなって途中で飛び出しても、『ごめん、タイミング悪かったわ』で済みそうなものの……こんなん、無理やろ。

くっそ、キスとかしてた時に逃げてたら、まだギリギリで『なんていうか…ごめん』で済んだかもしれんのに……ホンマウザいわ、教室で何しとんじゃ……。

と、己の判断と、ほんの数メートル先でいざ事に及ばんとしてるカップルに悪態をついてると、じーっとファスナーを下ろす音が……けど、ズボンのファスナーにしては長いな。せやったらこれは多分、スクールバッグ。

「あーあ、ロクなの持ってないなぁ。ごめんなさい、今日は手加減モードです。おうちに帰ったら、色々あるんですけど。」

学校に何持って来てんねん。ゴム? いや、でも手加減とか色々あるって、なんやろ……。

「べ、別にええけど……って違う! こんなとこで、すんなって言うてんねん!」

もう開き直って観察モードに入りだしたところに、ようやく男らしいところが出てきたんか、謙也さんがやっと言い返してきた。普段ヘタレとか言うてたけど、今だけは撤回するから頑張れ。

「でもほら、最低限の道具はあるから大丈夫ですよ。あ、これとか。」

「…っ…あ、ちょっと…脱がすなっ! 返しいや!」

「えーでもぉ、ローションでべたべたのズボン穿くの嫌でしょ。じっとしてくださいね。」

「な、何すっ…なぁっ…おい…!」

ああ、もう男らしい謙也さんのターンが終わった。やっぱヘタレはヘタレやった。

小柄な女子相手に、ガタガタと机やら椅子やら鳴らして抵抗してるようやけど、台詞から察しても完全に押されてる。

ガタンガタンうるさい音に紛れてため息をついてると、ビーッてテープを長く出したような音がした。音の大きさからすると、ガムテープみたいなんを思いっきり引っ張って出したみたいな。

ローションにガムテープ……持ち物検査でもあったら、どうやって言い訳すんねやろ、この組み合わせ。

「はいっ、これで自慢の脚は動きませーん。」

綾辻が昼間、練習が中止になって喜んでた時みたいなテンションでそう言って、パンと手を鳴らす。

この状況が最上級に嬉しいらしい。謙也さんの自慢の脚が動かへん状況……十中八九、さっきのガムテープで脚をぐるぐる巻きにしたんやろう。

見えへんから、どんな風にかまではわからんけど、動かへんって言うからには結構ギッチギチになんかも。テニスに支障出ん程度にして欲しいんやけど。

「くそっ、や、やめえや…家やったら、家なら、ええか、らっ…あっ。」

身体を揺らしてんのか、小刻みにギイギイ机か椅子かを鳴らして抵抗してるけど、謙也さんの声はどんどん上ずって、言い返す勢いがなくなってきてる。

こいつら家で何してんねやろ……先輩の喘ぎ声をBGMにぼんやりとそんなことを考える。

「はい、2回戦は私の家でしましょうね。しばらく遊べなかった分、いーっぱい遊びましょう。」

「ふ、あっ…それ無理っ、それ無理ぃ…んうっ…! それ、あかんの、知ってっ…くせにぃ…。」

完全にスイッチ入った謙也さんの喘ぎ声と、ローションを使いだしたせいか、時々にちゃにちゃとなんかを擦りつけてる音がする。

「いっ、ぎいいぃぃぃっ!!!」

……とか思ってたら、一瞬思考が止まる程の悲鳴とも呻き声とも言い難い、ただ言うとしたら、瞬間的な痛みじゃなくて……思いっきりつねられたときの声に近いような。

「あははっ、ビックリしました? 爪切り忘れてたからちょっと痛かったかもしれませんね。」

「…んな、痛いに…決ま、てっ……。」

爪をどこかに押し付けるとか、ひっかくとかしたんやろうか……何をしたのかはなんとも言えへん、けど……。きっと、見ていたら俺の股間も痛くなりそうなことをしたんや、あの悲鳴は絶対そうや。

男の痛みのわからん女は怖い……。

しかし、そんなことをされときながらも、謙也さんは息荒くばっちりスイッチ入った声でちょっと文句言う程度……。

「なんか入りそう。細いストローとか入るかなぁ。今度買ってこようかな…。」

にちゃにちゃと音を立てて謙也さんを煽っている綾辻は、虫の観察でもしてるような無邪気な様子で恐ろしいこと言う。

身体の中で細いストローが入りそうなところ、口? 鼻? この状況でわざわざそんなところ言うわけがない……。

「ひいっ…! そ、そんなんやめぇや…無理やって、絶対…っ…!」

上ずった声を震わせて怯える謙也さん、俺も話を聞いてるだけで大事なモノが痛い……だって、こいつ……。

「まぁ、尿道にストロー入れるなんて無理ですから大丈夫ですよぉ。チャレンジくらいはしたいですけど、あはははっ。」

無邪気そうに笑いながら恐ろしいことを言いよる。

そして、そんなとんでもないことを言いながらも、やることはやってるんか、粘液が何かと擦れる音、可哀想な男の喘ぎ声は途切れないどころか、激しくなっていく。

「んんっ、それっずる、ずるいぃ……やめって、言うてっ…んあっ…!」

ネットで見つけたエロ動画で聞いたような台詞や声が、この教卓を挟んだ向こう側で、俺がよく知った先輩の口から出ているのか……とても信じられへん。

だんだんと止める余裕もなくなったのか、謙也さんの口からは言葉になってない声があがる。

「あっあっやめっ…はっ……う、くぅうううっ…!」

一瞬堪えるように呻いてから発せられる、ひっくり返った高い声。何が起きたか簡単に想像ついた。

追い詰められてからの解放される快感は凄まじいもんなのか、俺も一人でしてて出す時は、少しは声出るけど……そんなのとは比べ物にならんくらい、謙也さんの声は切なくうっとりしていた。

……ああ、これが『M』ってやつなんか。

「わあ、すごーい。どろっどろでいっぱい。謙也さん、最近我慢してたんですか?」

ねちゃねちゃと粘液を聞かせるように鳴らしながら、世間話でもするようなノリで、綾辻がまだ息の荒い謙也さんに話しかける。

「……じ、自分が、二人で……するとき以外、ダメやって…言うから……ず、ずっと我慢、してたっちゅ……ぐっ、んんーっ!」

教室に入ってくるとき、綾辻は『ひと月ぶりに遊べる』て言うてた。

実際、ここ一ヶ月は週末に練習試合やらなんやら予定が入っていたので、そのぐらいの期間は二人で長々と過ごすことはなかったんやろう……一ヶ月か。

一ヶ月も我慢とか……健全な男子たる俺にはハッキリ言って無理や。なんなんこいつら、射精管理までしようとする綾辻に引くべきか、それを受け入れて実行する謙也さんに引くべきか……と考えていると。

「ひどっ、き、汚い! 最悪やぁ! うええぇ……飲んでもうたぁ……。」

甥っ子が苦い薬を飲まされて、それを頑張って吐き出そうとしてるときみたいな反応やな。

とか一瞬思ったけど、飲まされたモノはまぁ…台詞から察するに本人が出したモノなので、謙也さんに同情以外何もない。

「美味しかったですか?」

「こんなんっ……うううぅ……くち、すすぎた、いっ! 痛い痛い痛いぃいい!」

飲まされたモノを出そうと、ゲホゲホと咳込むことすら許されへんのか。

何をされたのかはわからんが、悲鳴に近い声をあげる人間が目の前におるのに、綾辻はさっきと寸分変わらん様子で同じ質問をする。

「美味しかったですか?」

コツン、と雨に紛れて聞こえる床を鳴らす靴底が、妙にプレッシャーを増幅させる。

「ひぐっ……はっ、はいぃ…。」

グスグス鼻をすすりながら、ひっくり返った涙声で答える先輩の様子。俺の中の何かがおかしくなってきそうや。

大人しくて少し空気読めへんとこもあるけど、小柄で可愛らしい系の女子に……性的な虐待レベルなことを逆らうどころか受け入れてる……テニスで全国行けるくらいの実力もあって、ヘタレやけど割と顔も整ってて女子の評判も悪くない先輩。

……こんなん誰かに話したところで、信じてもらえるんやろうか。

「素直で可愛い……。」

まだ微かにグスグス言うてる謙也さんを、綾辻が吐息混じりの声で心底愛おしそうに慰める。

こいつもこいつで気分が高揚しているんか、熱っぽいため息をついて、それはもう嬉しそうに話し出す。

「私の言ったこと、ちゃんと守ってくれてたなんて……。私、忘れてると思ってたから……凄く、嬉しいです。」

「……そらあ、の言うことやねんから……全部聞くに決まってるやろ。俺、がだ、大好きなんやから……。」

嬉しそうにしている彼女の台詞に、恥ずかしげに早口で答える彼氏。

これだけ見ると、爆発させてやりたくなるくらいThe★リア充カップルな会話やけども……。

会話の内容は射精管理についてなんで、リア充カップルと言うよりも『変態主人と忠実な下僕』なわけで……。

「ありがとうございます。私、本当に謙也さんのこと大好き。ずうっと一緒にいましょうね。」

「こ、この状況やなかったら、素直に受け取りたい台詞やな……。」

ある程度落ち着いたんか、謙也さんが引き気味に机をガタガタさせて、脚が動かんのをアピールする。

……しかし、幸せそうな会話なことで。変態は変態同士合わせるんが一番やねんな。

『エクスタシー!』が口癖くらいで変態って言うのは浅はかやってんな……俺は上らんでもいい大人の階段を上ってしまった。

俺の大きくついたため息は雷鳴にかき消された。

「いっぺん出したからかな。余裕ですね。」

「っく、そ、そんなんちゃ、うっ…や、めっ……あっ、んぁあああっ!」

これで帰るんかなー、と気を抜きかけた矢先に、耳に入ってくる喘ぎ声とぐちゃぐちゃ粘液を摩擦させる音。

ざあざあと止まない雨音に紛れて、ぐぷっとこもった聞いたことない音がする。

全く判断しようのない音に軽く恐怖を覚える。何……何してんの。

「この感触、好き……私、謙也さんの内臓に触れてるんですよ。この状況……凄く興奮しませんか?」

言うてる本人が一番興奮してるんか、艶っぽい吐息混じりの声で綾辻がそう言って、わざと聞こえるように空気と粘液をかき混ぜる。

内臓触ってる、なんて言い方されると一瞬何してるかわからんかったけど……これは、ケツの穴が痛くなるようなことをしてるってこと……やんな……。

冗談でホモネタとか喋ったり聞いたりで、ケツがどーのこーのってことは耳に入っていたけども……まさか実際遭遇するとは。

でも、こんなんされても痛いだけやろ。喜んでるんはBL世界の連中くらい……。

「……んっふ、う……はぁっ…。」

声を出さんようにしているのか、さっきみたいにスイッチ入りまくった喘ぎ声はしない……。

でも、我慢出来なくなって押し出された呻きは、どう聞いても快楽にまみれた気持ち良さそうな声。

「謙也さぁーん。」

うたた寝してしもうた人を起こすように名前を呼ぶ綾辻の方からは、くぐもった粘液と空気が混ざる音。ぐぷっごぽっみたいな。

こんな洋物のホラーだがSFに使われそうな効果音と一緒に聞こえてくるんは……。

「ふあぁっ…! あっうぅぅ……あぅんっ、あっや…そこぉっ…やぁっ…!」

「……ここお好きですもんね、知ってますよ。私、謙也さんのこと大好きだから、謙也さんが知らない謙也さんの身体のことも勉強したんですから、いっぱい。」

少し息の荒くなった綾辻が早口でまくし立てる。勿論、その間も謙也さんの声は止まない。……聞いてへんのとちゃうやろうか。

「あっははは……悦んでるのわかってるんですよぉ。もうこんなに硬くして、先からもカウパー漏らして…。あはは、ここにストロー入れて前も後ろも犯してあげたぁい…。」

完全に自分の世界に浸かった、耳がざわつくような熱っぽい声が、知りたくもない状況を説明してくる。

こればっかりは精神的に堪えるんか、椅子や机を揺らす音がより一層大きなった。

「はうっ…ゆっ、言わんといてぇ…! 」

半ば掠れた声が否定やなくて拒絶をする……あいつの実況は事実みたいや。

教卓を挟んで向かい側に、曖昧にしか想像出来ない俺のキャパシティを超えた現実がある……かと思うと、俺は……。

「ぐっぎぃいいいっ…!」

「…っ…!」

人の口から出たとは思えへん音に、俺は思わず息を飲んで身体を強張らせる。

「やだ…そんなカエルさんが潰れたみたいな声出しちゃって…苦しいですか? 今、私のお手々入ったんですよぉ。気分はどうですか? あはははっ。」

ぞっとする台詞に俺は思わず自分の手を見つめる。拳を握ったり開いたり……勿論綾辻の手は、スポーツやって筋張った俺の手よりも、ずっと小さいやろうけど……これが。

恐ろしい図を脳内が勝手に想像し始める…首筋に冷たい汗が流れて落ちる。ホンマに大丈夫なんやろうか…。俺の心臓がドクドクと脈打つのがわかる。

「そ、んな……無理ぃ…っ…。」

謙也さんは息絶え絶えに限界を伝えるだけで精いっぱい。

終わるまで待つとか言うてる場合ちゃうかもしれん、これはもう止めに入らんと……下手すると……。

「それ、毎回言いますよね。もう……無理なら、どうしてここから何か出てるんですかぁー?」

「ううっ…ちがっ……あっあっ、いやっ…先っぽやめぇ…!」

またぐぷりとこもった音がする。心底楽しそうな含んだ笑いと掠れた苦しそうな…いや、気持ち良さそうな声。

「ぐっああああ…っ……うぐっ、やめっ…それっくるし……。」

「……拳握ったまま抜いたら、流石に壊れちゃうかなぁ。」

もう一度、自分の手を握って確認してみる……背中にも冷たい汗が流れた。心臓の動きも忙しない。

「ぐあぁっ、ぎぃいいい…! あ、ああぁぁぁああああっ!!!」

綾辻曰く、カエルが潰れたみたいな声が耳に刺さる。

実は後ろにおるんは、人とちゃうんやないかって。そう疑いたくなるくらいの状況やのに、片割れはなんとも思ってないんか……。

「もう、大きな声出し過ぎですよ。しーっ。」

どこ叩いたんかわからんけど、ぺちんっと今までの出来事と比べると可愛らしい音がした。

思ってたよりも事態は安全なんかもしれへん……少しだけ冷静になる。これもプレイの一環なんか、と。

「ごめ、なさっ……、ゆるしっ……もう無理ぃ…。」

恐ろしい責めが止んだんか、叫ぶのをやめたグスグスした涙声の謙也さんが、息絶え絶えに許しを乞う。

勿論、謙也さんは悪いことなんかひとつもしてへん。けど、恋人に許しを乞う理由は……。

「じゃあ、イかせてあげますね。」

そう綾辻が無邪気に心底楽しそうな声で返す。と、すぐに雨みたいな水とは違う、ねっとりした粘液を激しく鳴らす音がする。

「ふっああぁぁ……うそぉ、前もっ……ずるいぃ…! んうっ、やっあ、あああぁぁぁ……!」

性感帯を前後同時に責められるって、どんな感じなんやろう? まだ落ち着いてないけど、俺の妙に冷めた部分が、ふっとそんなことを考えてる、と。

最後に大きくガタンッと机動いたと思ったら、教室全体が嘘みたいに静かになった。

別に雨足は変わってないはずやのに、雨音がざあざあと耳につきだす。

「はい、おしまい。」

「ひ、いぃんっ……。」

ずぽっと間の抜けた音と共に、まだ余韻に浸る甘ったるい声が耳に入る。

ようやく終わった異常な出来事の余韻が俺にも残ってるんか、俺の心臓はまだまだ落ち着きそうにない。胸の奥がモヤモヤしよる。

「最後まで可愛い…。」

慈愛に満ちた声とでも言えばええんやろうか。ホンマに愛おしそうに綾辻が呟く。

「……も、恥ずかしい…から、ほどいてや……。」

「教室のお片付けが終わったら。謙也さんまだ疲れてると思うし、休んでてくださいね。」

息を整えながら抗議する謙也さんをさらっと流して、何やらゴソゴソとカバン開けたりする綾辻

その横で謙也さんは『こんな状態で休めるわけないやん』とかボヤいてる。一体どんな状態でヤってたんや。……まぁ、正確には謙也さんだけが汚されてたわけやけども。

「……なぁ、そこ。なんか落ちてる。」

「んー……あ、これ、財前くんの携帯。帰るときに『ここに忘れたかもー』って言ってたんですよ。」

おお、携帯見つかった。見つかったのは嬉しいけど、ここで出て行ったら今まで我慢して教卓の下にいたのがパーになってまう。

内臓やら何やら触った手で携帯拾われたんか…って凹むのは後や…。

「ほな、光に連絡したらなあかんな……って、何しとん!?」

「え、財前くんに連絡しようと思って……落し物あるよーって。」

うわあ……めっちゃ触られてる……。そもそも、俺の連絡手段はお前の持ってるそれやっちゅーのに、一体どこに連絡する気やねん。自宅か? 勘弁してえや。

「どこに連絡する気や……せ、せめて着替えてからにしてくれへん?」

「えー、その必要ないですよぉ。」

「必要あるわ。仮に着替えてる最中に財前来てみい。俺だけやなくて、まで……へ、変態とか思われるで?」

「あははっ、大丈夫ですって。」

そうそう。もう謙也さんが教室で彼女にケツ掘られて悦んでるドMやってことは知ってるんで。今更っすわ。

なんて心の中でツッコミ入れてると、心臓を鷲掴みにされたような衝撃が走る台詞が飛んできた。

「――だって、最初からいたもんねぇ、財前くん。」

完全に俺に向かって話しかけてる……見抜かれてた。頭の中までも脈打つくらいの緊張が走る。

教室全体が凍りつく。暗い教室がざあざあ振る雨と、遠くに響く雷の音だけになる。

そうか、俺は最初っからこの異常な遊びの頭数に入っとったんか……。

「……ちょ、ホンマこの冗談はわらえ」

この凍りついた空気を、乾いた笑いでごまかそうとする謙也さんの台詞を遮るように、俺はずっと身を隠していた教卓の下から姿を現す。

「なんや、バレとったんか。」

まず目に入ったのは手足をガムテープでグルグル巻きに縛られた哀れな先輩。

視線をずらすと、手がぬらぬらと不自然に濡れている以外は特に気になることないクラスメイトが、機嫌良さそうに目を細めとんのが映った。

「う、うそ…やろ……うそ、俺、ずっと……。」

金魚みたいに口をパクつかせて、この状況で唯一自由に動かせる首を横に振って、全身をガタガタと震わせる可哀想な先輩。

「その格好、よう似合うてますよ。」

そう言って、全身舐めまわすように見てから、視線を顔へと移すと、絶望に満ちた目がボロボロと涙をこぼす。

「次は財前くんも一緒に遊ぼうね。」

綾辻は昼間横で見ていたのと全然変わらん笑顔で俺を誘う。

遊びの内容がこんな下卑たモノやなんて忘れそうなくらい、邪気を感じさせないふんわりとした笑みに、俺も自然と口の端が上がる。

「――しゃーないな、付き合ったるわ。」

まずは……携帯見つかったし、写真でも撮ろかなぁ。









夢で女x男のエ□あってもいいじゃないか&開発された謙也さんってーのが書きたくて。
仲間も増えたしハッピーエンドですね。
夢でエ□書いたの初めてですけど、楽しいですね。
出来たら増やしていきたいなぁ。
とりあえず、音でしか状況判断出来ない視点でエ□はハードル高かったので、次はもっと考える。


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あきゅろす。
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