創作な文章 2 俺にも魔法が使えたら、父も母も俺の『冒険者になる』という夢を止めはしなかったんだろうな。 今、戦士の扱いったら奴隷レベルだからな・・・まぁ、戦士オンリーでパーティ組んでもいいんだけど。 そうするとギルドから依頼が来ないっていう・・・ね。 戦士にとっては世知辛い世の中だ、いや本当に。 まぁ、暗いこと考えるのはよそう。 せっかく防具屋のおじさんに作ってもらった火竜の装備フルセット姿、村のガキんちょ共にでも見せびらかしてくるか。 そんなことを思いながら、2階の俺の部屋からドタドタと階段を下りていく。 階段を下りると淹れたてコーヒーのいい匂いと焼きたてクッキーの甘そうな匂いが鼻をくすぐる。 「お、いい格好してるじゃない。ほら、あんた見てごらんよ。シトラスの格好。」 木を削って作った手作りカップにコーヒーを注ぎながら、母が芋の皮剥きをやらされている父の肩を小突いた。 あ、シトラスってのは俺の名前ね。 由来は妊娠中の母が柑橘類ばっか食ってたからっていう、愛があるのかないのかわからん由来。 ところで、エルフは美形、その上長寿で老けるのも遅いっていうのは、この世界の常識。 俺の母もエルフなわけだが、『あたし17歳、彼氏募集中でーっす★』とか言ってツインテールにして短いスカート穿いて街をうろつけば、確実にアヤしいお兄さんorオジサマに声をかけられそうなくらいに若い。 あくまでも見た目だけは。中身は完全にオバサンだし、実際の年齢は父しか知らないという。 父は普通の人間なので、40半ばという年相応に若干疲れた顔をしている。 「こないだ貰った鱗で作ったんだったな。似合ってるぞ。」 「もう歴戦の戦士って感じ?」 「バカね、逆よ。そんな全身ピカピカの防具じゃ新米をアピールしてるようなもんよ。」 母の台詞に父が『そうだな』と頷いてコーヒーをすする。 防具というものは使ってこそらしい。傷がついてこそ、苦しい戦いを超えてきた証だそうな。 ピカピカの鎧じゃ『俺はまだ戦ったこともありませーん』とアピールしてるようなものらしい。 ま、鋼より硬くて重くて丈夫な防具にすら簡単に傷をつけてしまう、そんな強い敵と戦うってのが冒険者ってもんだしな。 [*前へ][次へ#] |