[携帯モード] [URL送信]

創作な文章

俺の首にかけられた勾玉型に加工された透き通った薄い緑色の石。

エメラルドなんで高価な物、拝んだことすらないが、きっとこの緑をエメラルドグリーンと言うに違いない。

けど、この綺麗な石の首飾りは母が先ほど俺にくれた物です。そして、これは父が母に初めて贈った物です・・・なんで、それを俺に渡す。

「それはね、『身代わり石』って言って身につけた人がピンチに陥ったときに助けてくれるっていう『迷信』があるの。」

はっきり『迷信』って言いやがった! もっと他の言い方あるだろ、『言い伝え』とか『伝承』とか!

すると切ないような悲しいような非常に複雑な心境がもろ顔に出たまま父が、ぽん、と俺の肩に手を置く。

「・・・シトラス、大切にしろよ・・・きっとお前のことを守ってくれるさ・・・。」

父が完全に諦めモードです、今更断りにくいです、なくしたりしたらとんでもない目に遭いそうです、迷信とかそんなんどーでもいいから大切にしようと思います。

「まぁまぁ、暗いことはさておき、もう出発したら?」

この母のセリフは遠まわしに『早く出て行け』と言われているような気がする・・・うん、そんなことないと思うけど、ちょっと傷ついた。

「お、じゃあ、これ持っていきな!」

村で気前のいいと評判のおじさんが俺の腕を引っ張り、ずっしり重い麻袋を引っ掛ける。

中を見るとおじさんの庭で採れるリンゴが大量に・・・おぉ、嬉しいけど重い、でも嬉しい。

おじさんをかわきりに、村の人達が次から次へと俺に荷物を・・・いや、餞別をくれる。

お隣の女の子は今朝焼いたパン、近所のお子様集団は昨日急いで集めたと思われる木の実、他にも色々食べ物が多かった。流石農村。

「ふふ、食べることには困らずにすみそうね。」

伯母がのん気に笑いながらそんなことを言う。

確かにそうだ。食べることに困らないのは嬉しい・・・でも、重い・・・。

とりあえず、頑張って貰ったもの・自分が用意したもの全部を背中に背負う形にしてみると少し楽になった気がする。

ついでに落としてしまった偽ミスリルの剣も腰に携える。うん、これでオッケーかな。

「うん、準備ばっちりね。」

『それじゃあ・・・』と母が音頭をとると、村中の少ないながらも俺の為に集まってくれた老若男女そろった声が俺の胸に響く。

『行ってらっしゃい!!!』

村総出の行ってらっしゃいにまだ出発するところなのに不覚にも泣きそうになった。





コメント
更新するネタがなくなったので・・・。
1年以上の前の文章をうpるのは、抵抗あるんだけどー。
クオリティそんなに変わってないってーのは悲しいところですぬ。

[*前へ]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!