創作な文章
6
再度村の広場へ向かうと、さっきまでの慌しさはすっかりなくなっていた。
代わりに村中の人が俺を待ち構えていたように俺の方を見ている・・・。
その中、母がずいっと前に出て新品と思われる片手剣をすっと差し出した。
「はい、これ。あたしと父さんが『頑張ってお金を稼いで買ってあげた』剣。大事にしなさいね。」
父と母の自分を思う行動に俺の胸は感謝の気持ちでいっぱいなる・・・はずなのだが。
一部を非常に強調されたまくったセリフのせいで、どうも感動が薄れてしまう。
母もいらんことを言わんかったらやな俺も・・・うおう、つい訛ってしまった。
これから都会に出るってーのにいかんいかん。
とにかく、せっかく『頑張ってお金を稼いで買ってもらった』剣だ。悪い物のわけないだろう。
わくわくした気持ちで剣を鞘から抜くとうっすらくすんだ銀色の刀身が姿を現す。
なんで新品なのにくすんでんだよ・・・。
俺が訝しげな顔をしていると母が仁王立ちで自慢げに話し出した。
「どう、ミスリルの剣よ! もうすっごくすっごく高かったんだからね!」
ミスリルって・・・あの色んな物語で最高の鉱物みたいな扱いされるミスリルですか!?
そーいや、確かミスリルってちょっと灰色にくすんでるんだよな。
だからこれもうっすら灰色にくすんでるわけだ、ヤバイぞ。俺の旅は非常に順調に進みそうだぞ。
まだ戦士としての経験ゼロなのに火竜の鱗で作られた防具を全身に纏い、最硬と言われるミスリルの剣を腰に携える・・・俺、すっごい恵まれてる!
だが、そんなテンション上がりまくりな俺にパートナーの魔法使いである伯母は随分と冷ややかな目線を送ってくる。
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