戦国拍手ログ
2007年4月
ぼぅ、っと青い空を見ていたら、横に座っていた傾奇者が口を開いた。
「名無しさん。何、見てるんだい?」
「んー」
一向に答えない私を見て、苦笑を浮かべる気配がする。
「団子、食わないのか?ならもらうとするかねぇ」
その一言で我に返った。
「ダメ!それ取ってあったんですっ」
「俺の質問より団子が上なのかい。これじゃ傾奇者も形無しだねぇ」
そう言って笑う彼に、うっ、と言葉を詰まらせてしまった。
「そ…そういうわけじゃないです」
「じゃあ、何を見ていたんだ?」
先程の質問をされ、思案しつつも答えた。
「なんていうか…。こんなご時世だから、いつ死んでもおかしくないじゃないですか。もしかしたら、明日死んでしまうかもしれないですよね?人の命なんて、先は見えないものだから」
そこまで言うと、ほぅ、っと一つ息を吐き出し、空を見る。
「だから…こんな綺麗な空を目に焼き付けておかないってのは、もったいないかなぁ、って」
再び空に心を奪われそうになった、その時。
「そうだな。じゃあ…俺も後悔しないように動くとするか」
そういう言葉を聞いた。
「…え?」
後ろから温かいモノに包まれた。すっ、と大きな手が胸元を這い上がり、顎に手を掛けられる。手に導かれるように顔を上げると、逆さに写る彼の顔。
「どうせなら、俺は名無しさんと生きてる間に極楽浄土へ行きたいねぇ」
「け、慶次さん?」
驚いて見開いた目に金色が広がったかと思ったら、唇に熱いものが降りていた。
極楽なんてあるのかどうかも分からないし、あったとしてもどんな所か分からないけど。
彼がいる地上と比べたら、きっと色のない世界に違いない。
金色に包まれながらそんなことを思ったけれど、やがてそんな思考も、熱に溺れて空の彼方へ溶けてしまった。
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!