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ダーズンローズ










「この服・・・・どうしようかなぁ」







現在朝6時。
昨日の事が忘れられなくて、当たり前の様になかなか寝付けなかった私。
まだ手に昨日の感触が残っているようで、蘇ってくる記憶に恥ずかしい気持ちになりながらもアポロさんの貸してくれた服を手に持った。
綺麗なドレスを着て彼と話した一日は本当に夢のようで、まるでシンデレラ気分を味わったようだ。
でもその裏で似合わないと思ってしまう自分がいるのも真実であり 私は苦い顔をしてドレスを綺麗にしまう。







「また・・・返せばいいよね」






いつになるか知らないが、きっとまた会えるだろう。
携帯のアドレスに彼の名前が有るのを何度も確認しながら、私はそわそわと部屋中を歩き回った。







「アポロさん・・・・」






ポツリと小さく声を漏らし、顔を赤くさせて深い溜息を吐く。
そのまま自然とニヤけてしまう頬に手を添えながらドアへと振り向くと、
そこには悲惨なものを見たかのような顔をした母がドアにもたれ掛かり、私を見つめていた。






「きっもち悪」

「かっ、勝手に部屋開けないでよおおおおおお!!」






顔を真っ赤にして泣き叫ぶ娘を、痛い視線で見つめ続ける母。
これ程までに恥ずかしい事は無いだろう。いや、もう人生最悪だ。
大袈裟かもしれないけど、今時の女の子だったらこれ程まで哀れな姿を親に見られるのは死ぬ程辛い。

何故ニヤけたし、自分。







「朝からうっさいわね。そんなに好きなら月曜日からそのドレスで学校に登校すれば?超人気者じゃん、やったね」

「うるさい黙って」

「あー、はいはい。いいから早くご飯食べなさいよ」

「・・・・出来てるの?」

「うん」






そう言ってどさりっと床に放り込まれた紙袋に私は視線を向ける。
近所でも有名なハンバーガー屋の紙袋に、中から微かに匂ってくる揚げ物の匂いでそれが何かが分かった。

どうせ会社帰りにドライブスルーでポテトかハンバーガーを買ってきたに決まっている。
未だに暖かいその紙袋を持ち上げると、私はドアの前に立っている母を避けて階段に向かった。






「食べないの?」

「リビングで食べる」

「あっそ、まぁ朝ぐらいゆっくりすれば」

「そうする」






朝ぐらい の言葉に少々引っかかったが、私は特に気にする事なく部屋を出た。
差し込む朝日の光で廊下が照らされ、少し肌寒い肌を擦りながら階段を下りる。

そのままリビングのドアを開け、机の上に紙袋を置き 空いている手でリモコンを握った。
スイッチを押すのと同時に映し出される映像に、私は視線を向けたまま冷蔵庫へ向かう。
適当にお茶をコップに注ぎ、それを片手に持って椅子に座り母の買ってきたポテトを一つ口にいれた。







「すっごー、あんな綺麗な石落ちてるんだね・・・」







テレビに映っているのは綺麗な藍色に光輝く石。
それを手に持って幸せそうな顔をしている男性の姿を私はもう既に見慣れていた。
御曹司でもあり、その素敵なルックスで一躍有名人にまでなった彼を 私はいつも関心しながら眺めていた。






「ダイゴさん、いい歳なのに結婚しないのかなー」






雑誌にもマスコミにも恋愛に関して彼は一切報道されていない。
寧ろ石が好き過ぎて、世間では彼の嫁は石 とか変なキャッチコピーまで定着しつつあるぐらいだ。
そこは彼の良い所かもしれないが、それでも何か凄く勿体無い気がしてならない感じがして 私は苦笑いをする。



(まぁでも早く結婚はしちゃった方が良いと思うよ、ダイゴさん)



軽く笑いながらお茶を飲もうと手を伸ばした時、不意に手に触れた物に私は反射的に視線を向ける。
そこには例のあのお見合い写真。それを見た私は一瞬で凍りつくと そのままぎこちなく顔を動かしながら再びテレビへと視線を向けた。






「結婚はまだ大丈夫ですよ、ダイゴさん」






むしゃり と、ポテトを頬張りながら 私はテレビに映る彼にそう語りかけた。
彼が石を好きなように、私も何か好きな物を見つけたほうが良いかなーっとか少し思ってみたが、今はそんな暇はないとすぐ現実に戻される。





(今日、何しよっかなー・・・・)




テレビにはダイゴさん、そして特別ゲストで招かれたモデルのミクリさん。
画面から漏れる客の声援を呆然と聞き流しながら、私はふとある事に気付いた。






「そう言えば似てるなー・・・ダイゴさんとミクリさんって」





アポロさんとランスさんに。


なんていうか髪的にだけど、それでもミクリさんもランスさんと少し惜しい髪型をしている気がする。
写真でしかあまり見たことが無いけど、それでもやっぱり似てると私は思った。
でも正確に言えば、昨日少しだけランスさんを実際に見た。窓越しにだけど。






(でも写真と全然イメージ違う・・・・)





写真に写っている彼の表情はとても優しげで、穏やかで、女性が好きそうな理想的イメージだった。
でも昨日見た彼の瞳は鋭くて、まるで一瞬針で射抜かれたような感覚がした私は身体をぶるっと震わせ息を呑んだ。
少なくともあれは好意的な視線では無い筈だ。寧ろ何か気にくわないような表情に近いような気がする。

深い溜息を大袈裟に声に出して吐くと、その時タイミング良くピンポーンと家のチャイムが部屋中に響き渡った。
おもわずビクリと肩を震わせ、私はリビングのドアの先をじっと見つめて恐る恐る立ち上がる。

なんでだろう、彼の事を考えてたらまるでドアの先に彼がいるような気がしてくるのは。
そんな事は絶対にないと分かっていても、何故か私の足はなかなか前には進まなかった。それに微かにドアノブを握ろうとしている手まで震えていたのだ。





(思い込みって、凄い力持ってるよね・・・)





生唾を飲み込みながら、私はゆっくりながらも足を玄関へと進めた。
このまま居留守を使えば良いだろうけど、でももし宅配便だったら困るし 母にも迷惑がかかってしまう。
私は頭の隅に引っかかる彼の残像を忘れようと両手で頬を叩いた。どうせ、嫌でもいつか会うんだし何を今更悩むのか。






「はい」






声を出し、開けたドアの隙間から漏れる外の光に一瞬私は目を細めた。
するとそのすぐ後、漂ってくる薔薇の強い香りに私は眉を寄せ 目の前に居る人物に目を見開く。








「どうも、おはようございます。」







極上の顔で微笑みながら、パチクリと目を瞬かせる私を見つめ 目の前に立つ彼は当然のように言い放つ。
キラキラと輝く笑顔には花が見え、例えにしたら可笑しいだろうけど一瞬にして私の玄関はお花畑と化した。
そして私は恐る恐る彼に目線を向け、未だに頭の中にひっかかる事を確認しようと問いかける。






「あの・・・もしや、ランスさん・・・ですよね?」

「ええ、そうですよ。他に私以外の誰がいるんですか?」






日の光を反射し、宝石の様に輝く髪を綺麗に整え、しっかりと黒いスーツを着こなす姿は大人びており
透きとおる様な白い肌、年上ながらも甘く整った顔立ちと鋭い目元は美しいの他に言い表せなかった。
いくら遠くから見たり写真で見たとはいえ こんな至近距離で見る本物はやっぱり違う。
彼の視線が私を捕らえ、その目が甘く細められるだけで背筋に電撃がはしったかのような感覚に陥り、頬が何故が熱くなった。







「こんなものしかないですが、どうぞ」

「あっ、いえどうも。す、凄く綺麗ですね、この薔薇」

「貴女が言いますか」

「えっ」






ぎょっとして彼を見つめると、そのまま微笑を浮かべたランスさんがぐっと私に近づいてくる。
目の前に広がる宝石の様なエメラルドグリーンの瞳がキラキラ輝き、それに見惚れていると数センチとない距離で彼に囁かれた。







「あまり他人事のように言え無いんじゃないですか。そんな顔して」







もたれ掛かるように私の右肩に手を置き、もう片方の手で薔薇を一本抜き取った彼が それを私の唇に軽く押し付けてきた。
広がる薔薇の香りに酔ってしまいそうになりながら、私はランスさんに視線をやると彼は極上の笑みで私を見下ろす。







「花が嫉妬してしまいますよ」

「うわっ・・!!」







ちゅっと静かにリップ音を残しながら、押し付けられた薔薇の上に彼が甘いキスを重ねる。
直接触れてはないものの、薔薇越しのキスには流石の私も驚いた。

・・・な、なんというキザな男なんだろうか。

そんな事を思っていたら、それを見透かしたかのようにクスッとランスさんが私に笑っていた。






「こんな事で驚かれては、私も困ってしまいますよ。ただの挨拶です」

「いっいいいやあのランスさん?ここ日本だから」

「国なんて関係有りませんよ、『私』の挨拶なんですから」

「ひっ・・!」






薔薇で頬を撫でられ、ニヤリとした表情で私を見つめるランスさんはアポロさんとは違い 少し積極的な感じがした。
何故か冷や汗を浮かべながら、私は彼を見つめ不安を感じる。
それはこれから起こる出来事に私の頭が付いて行けるかという不安であり、ドクドクと体中を駆け巡る血液の音すらに緊張してしまった。














「では改めて・・・、おはようございます、ナマエさん。行き成りですが私と出かけませんか?」


















ダーズンローズ

























薔薇の香りのせいか、フラフラとする足元に気付いた彼が私の腰に手をまわす。
そのまま手を引かれれば私の足は一歩一歩と外へと歩み出し、白い高級車が私の家の前に止まっているのが目にとまった。








「行きましょうか」







薔薇の束は玄関に置いてきたが、何故か一本だけ握っていた薔薇に視線をやると それに気付いた彼はスッと取り上げてしまう。
見えないようにゆっくりと薔薇を背中に隠して、彼は器用に片目だけ瞑って甘く囁いた。







「薔薇も良いですが、こっちも・・・・・ね」








計算尽くしたかのような彼の甘い笑みに、私は視線を強制的に合わされてしまった。


―――なんと言うか、信じられない程の王子様キャラに 度肝を抜かれた感じだ。
























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ぶっふぇええええ、ぶほぉおお(殴
途中キーボード打ってる指を切り落としたくなりました((

久しぶりに書いたら話が・・・・え、もう自分どうしたって感じです
薔薇ってこんな使い方するっけ。いや寧ろ私は薔薇押し付けられたらむしゃりつくぞ(キモイ
さすが薔薇ランス・・・いやバランス←←

とりあえずランス様出せたよ!ただそれだけに涙←



10/10/31

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あきゅろす。
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