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スターブルー

















「さ、着きましたよ」

「あ、ああ有難うございます」





優しそうな笑顔を見せるエレベーターのおじさんに私はお礼を言うと、そのまま少しずつ震える足を前へと動かした。

本音を言うと、出来る事なら今すぐこの場から逃げ去りたい。
本当に何故こうなったんだろう。あれかな、シンデレラみたく12時になったらこの服全部ボロボロになるんじゃないのか。


ありえない事も無い妄想を繰り広げている私は一人悶々と考え込んでいると
窓際の席に座っているアポロさんがこちらに気付き 席から立ち上がってきた。







「あ・・・・・」






だが私を見るなり、彼は少しだけ目を見開き 小さく声を漏らして固まってしまった。
私は首を傾げて彼を見つめるが、それでも彼は何も言わずにただ黙っている。

しかしなんだろう、今の「あ」って言うのは。
きっとその後に「貴方には似合いませんでしたか・・・・」とか残念そうに言うんだろうな。
・・・畜生、悪かったですね。


私はムッとした顔で彼を少し睨んでいると、それに気付いた彼は小さく笑うなり 私の膨らんだ頬はその綺麗な指によって潰された。





「それは反則ですよ」





甘い声で囁かれた彼の言葉に 頭が真っ白になっていると、そのまま相変わらずの慣れたようすで手を引かれて私は椅子へと座らされる。
そして私の目の前に座り、彼は近くに居た控えの人に何かを言うなり そのままその人は何処かへ姿を消してしまった。






「今日は、あまりゆっくり出来なくてすみませんでしたね」

「あ、いえ。そんな全然・・・・」

「私も、夜は予定開いているのですが・・・・・」

「え」





彼の色っぽい視線に私はピシャリと固まっていると、彼は「冗談ですよ」と笑っていた。
冗談にしては酷すぎる言葉に私は困惑していると、そのまま彼は私の手に自分の手を添え 少し上目目線で私を見てくる。






「貴方さえ宜しければ、いつでも泊まりに来ていいんですよ?」

「え、いや・・・!折角なんですが私、学校があるので・・・・」

「なんなら今日でも良いですが」

「明日土曜日だからって駄目です・・!!」

「おや、それは残念」





クスクスと楽しそうに笑いながら、彼は私の指と指の隙間をスーッと撫で上げ そのまま彼の細い指に絡めとられる。
時々クイッと指を曲げられ、私の指を握ったり 先から下まで爪で刺激されたりと、何故だか私は顔を真っ赤にして彼を見つめた。
そんな私の様子に気付いた彼は私を見るなり、誘うような目で私の瞳を捕らえる。






「一緒に寝ますか」

「寝ません」

「襲いませんよ」

「今襲われてるんですけど」

「こんな事で襲われてるなんて言っていたら、これからやっていけませんよ」

「何を」

「さぁ」




『何でしょうね?』と、意味ありげに笑った彼に対し 私は心の中で「ホストか」と密かにツッコミを入れたが
なんだか、このままの考えじゃ本当に彼に勝てないような気がしてきたナマエは一人で項垂れた。

別に勝ちたいとは思っていないけど・・・なんだろう。この微妙な気持ちは――

私は変な脱力感に深い溜息を吐くと、『失礼します』と言って黒いスーツを着た男性がテーブルに皿を置き、そしてまたお辞儀をして静かに去っていった。
そのまま目の前に置かれた皿に目をやると、普段ではあまり食べる事のないような料理が並べられている。
あまりの綺麗さに私は食べるのが勿体無いな と複雑な思いでいると、それに気付いた彼が微笑しながら私に口を開いた。




「どうぞ、口に合うかどうか分かりませんが」

「い、いえそんな!・・・・い、いいただきます」

「はい」



彼に見られながら恐る恐る料理を口にするが、それは緊張によって味が掻き消されてしまい 私は少し勿体無いと思った。
目の前にいる人物がまだ母だったら気楽に味わって食べれるだろうが、何しろ今は今日会ったばかりの婚約者(らしい)。
こんなんじゃ食べ終わる頃には、味もなんも覚えてないだろう。


私は彼に気を使われない程度に料理を口に運んでいると、いきなり彼が料理を食べていた手を止めて 窓の外を眺めだした。





「ナマエ」





静かに彼の方へと視線をやると、そこには夜景の光を瞳に映してる彼の横顔があった。
じっと 窓に映っている綺麗な夜景を見ながら、彼は先程より少しだけ声を落として喋り始める。






「いきなり誘ってしまいましたが、なんだかいろいろと行き成りすぎたみたいで・・・すみませんね」

「な、なんですか突然」

「いえ。なんだか先程から貴方が・・・疲れているように見えたので」

「え――」




疲れてる? 私が彼に分かるほどに、そこまで表に表情が出ていたと言う事なのだろうか。
私は少しだけ首を傾げ、難しい声で唸りながら眉間にシワを寄せた。

私は知らない内に、彼に変な心配でもかけさせてしまったのだろうか―――




「確かに、行き成り車に乗せられたり。しかも親からは前日に貴方の事を話してもらったばかっりで・・・
 全部が突然すぎてビックリはしましたけど。でも別の意味で疲れているかもしれませんね」

「別・・・?」

「私、こう言うの。実はちょっと苦手なんです」




綺麗な夜景に、それに負けないぐらいの料理、そしてこの服も。どれも私には不釣合いなものだ。

苦笑いしながら「失礼ですよね」と言ったナマエに、彼は少しだけ眉を寄せて口を閉ざした。
そんな彼の様子に不審を抱いたナマエは「あっ」と声を張り上げるなり、いきなり手をブンブンと左右に振り出す。




「でっ、ででも驚いてるんだけでっ・・・!ちゃんと楽しいですからっ」

「・・・楽しい・・・ですか」

「はい!」

「・・・・本当ですか?」

「・・・・まぁちょっとだけ『私には勿体無いかなー』っとか、『ちょっとこれは、おかしいんじゃ』って思うところもありますけど・・・・。でもちゃんと楽しんでますから」

「・・・そうですか」

「はい」




私が自信を持って返事をすると、いきなり彼が声を押し堪えて笑い出した。
肩を震えさせながら声を出すのを我慢させ、必死に静めようとしている様子に私は驚愕していると突然彼が私に視線を合わせる。





「てっきりっ・・・・、私だけかと思ってましたよ」

「え・・・何が・・・?」

「私だけ、・・楽しんでいるんじゃないかと」




『やっぱり面白がってたんだ』と、私は未だに肩を震わせて笑っている彼を見ながら心の中で呟いた。
だって絶対にこの色気に付いて行ける今時の女子高生なんて居ないでしょ。居たら逆に見てみたい。




「子供の私にはアポロさんは少し刺激が強すぎます・・・・」

「何がです・・?」

「さっきから、私の事苛めすぎじゃないですか?」




思ったことをそのまま言い、少しだけ顔を赤くさせてナマエが拗ねていると 彼は「フッ」とまた笑い出した。
「また・・・」と私が微妙な顔をしながら彼を睨んでいると、突然彼が携帯を取り出して私にそれを向ける。

何事かと私が固まっていると、いきなり彼の携帯から カシャッ という音がして、そのままアポロは満足気に携帯の画面を見つめた。




「フフッ・・」

「ちょっ・・・!ちょっとアポロさん・・!?」

「貴方、本当に可愛いですよ」

「そんな笑いながら言われても嬉しくありません!!いいから早く消してくださいよっ!」

「もう保存しました」

「ちょっと・・!!」




携帯の画面を私に見せる事無く、そのままパタリと閉ざしてポケットにしまった彼に私は本気で顔を真っ赤にせさて怒ってしまう。
確かに今日は楽しかったかもしれない。でもそれは明らかに『彼』だけの話だ。

私は「いい加減にして下さい」と彼に本気で頼み込むが、それでも彼はまだ嬉しそうな顔をしながら私に微笑みかけている。





「本当に、今日は来て良かったですよ」

「・・・説得力がありません」

「いえ、貴方は今までの女性とはまったく違いますよ」

「・・・そりゃ違いますよ。私まだ子供ですし、きっと―――」




きっと今までアポロさんが付き合ってきた女性みたいに、綺麗でもなんでもない。
私は何故か一人切なくなっていると、不意に視界の端がぼやけてきた。

きっと今日はお母さんがサプライズで用意したドッキリなのかもしれない。と、私の心はそれで埋め尽くされる。

考えてみれば、こんな女顔負けの綺麗な人が私と話て、食事して、笑ってくれているなんてありえないんだ。
この人にはもっと綺麗な女性がいる。 私がそう思って黙っていると 突然彼が席を立ち上がって私を見つめた。

行き成りの事で思わず涙はひっこんでしまい、ただ驚いていると彼が私の手を掴んで立たせる。




「場所、変えましょうか」

「・・・・はい?」

「ほら、行きますよ」

「あっ、ちょっと・・・・!」





食事を中断させ、そのまま彼は私の手を引いてエレベーターへと足を進めた。
そのまま地下のボタンを押し、いっきに最上階から一番下へと私達は移動する。勿論その間も、彼は何も言わずにただずっと前を見ていた。

そして地下駐車場に付くなり、彼は車に私を乗せて そのまま手馴れた手つきで車のエンジンをかける。





「鉢合わせしなければ良いんですがね・・・」

「え、何がですか・・・・?」

「いえ、こちらの話です」






彼が真剣な顔をして車を出そうとすると、突然私の座っている助手席の窓が コンコン と叩かれた。
不思議に思って横を見ると、そこには凄く綺麗な女性がニッコリとナマエに微笑んでおり その右手にはキーホルダーの付いた携帯がぶら下がっている。
見覚えのあるそれに私が驚いて声を出すと、それに気付いたアポロが少々嫌な顔をしつつも車の窓を開けた。





「あらアポロさんじゃない、お久しぶり」

「・・・・久しぶりですね」

「相変わらず冷たいんですね」

「そんな事はありませんよ。それよりそれ、返すんでしょう」

「アポロさんが急いでこの子を引っ張っていくからでしょう。・・あっ、はいコレ」

「あ、私の携帯・・・!すみません、有難うございます」





真っ赤な唇からは「いいのよこれぐらい」と、綺麗な声が漏れ 思わず女の私でも見惚れてしまうほどだった。
きっとアポロさんに相応しい女性は こう言う人を言うのだろうと思う。だがそうなると今の私の立場が本当に情けなくて仕方が無い。

すると女性から少し離れた後ろに一人の男性が姿を現し、それに気付いた彼女が はっ と顔を後ろへと向けた。




「行きますよ」

「ゴメンなさい、人を待たせているから私はもう行くわね」

「あ、いえ。拾って下さって有難うございました」

「ええ。じゃぁね」




そう言って小走りで走っていく彼女の先にはおそらく『待たせている人』が数メートル先の車の前で腕を組んで立っていた。
気付いた彼は 緑色の髪から覗く鋭い視線をこちらに向けており、一瞬目が合った私は少しだけ身体を強張らせてしまう。
そしてよく見れば見るほど、ナマエの頭の中で何かが引った。


(あの人・・・・何処かで)


すると、あともう少しで思い出すと言う所で突然 身体が前へと揺れ、驚いて我に返ると既にアポロが車を走らせていた。
目を見開いて彼を見れば、何事も無かったかのように横から優しい声がかけられる。





「行きましょうか」

「は・・・はい」





顔は笑っているのに、何処か少しだけ機嫌が悪そうな顔をしたアポロにナマエは何も言う事が出来なかった。
あの人達から避けるかのように、素早く駐車場から抜け出していく理由は まだ聞いては駄目だろうと思って
自然と口を閉ざし、ナマエは車の窓に映る景色をただ静かに見つめる。






(さっきの人・・・)






写真とは大分違ったがおそらく、そうだろう。
けど今は隣に居る彼に『何も考えるな』とでも言いた気に頭に手を置かれ、片方の手で器用に運転しながらそのまま するり と頬を撫でられた。





































「ここって・・・・」

「ええ、貴方の家ですよ」

「・・・アポロさん」

「なんですか」

「私に、気を使ってくれてるんですか・・・?」





あれから場所を変えると言い、急いで車で来た場所は間違いなく私の家だ。
そして家の前に車を止め、彼は先に車から降りるなり私を車から降ろさせて そのまま家の前まで丁寧にエスコートをする。




「あの、大丈夫ですよ?わざわざ玄関まで送っていただかなくても・・・・」

「駄目です」




きっぱりと力強く言った彼の一言に、流石の私も ぎょっ と驚き 固まってしまう。
何故ここまで彼は完璧な紳士なのだろうかと首を傾げれば、アポロさんは私に向かって優しく笑った。





「婚約者に何かあっては、結婚できませんからね」

「けっ・・!?」

「・・・そんなに驚く事じゃないでしょう」

「いや・・でも、あの・・・・まだ」




当然とでも言うような顔をしているアポロさんに対し、私は顔を真っ赤にして慌てる。
だがそんな私の反応を見た彼は少し笑い、そのまま何処からか一つの袋を取り出した。

そしてアポロさんは私の手をとるなり、優しく口付けながら真っ直ぐな瞳で見つめてくる。





「たった少しの間でしたけど、ちゃんと分かりましたよ」





そう言って袋から花束を取り出し、綺麗な水色をした花を私にへと向ける。
私より彼の方が似合うんじゃないかとも思ったが、今は彼が私の為にと差し出してくれたのが何よりも嬉しかった。
そして差し出された花をゆっくりと受け取れば、まるで夜の暗さで顔を隠すかのように そのまま彼は数歩後ろに下る。








「貴方は、私が見てきたどんな女性よりも可愛いですよ」








まるで映画の中のような世界に、私はただ顔を真っ赤にして立ち尽くす事しか出来なかった。
そして彼が車に乗ったのを確認した私は、そのままなだれ込むように家の中に転がり込んだ。




















ブルースター

















時刻を見ればまだ8時。
幸いな事に母はまだ仕事で帰ってきておらず、私は ほっ と息を付いて椅子に座った。

彼に貰った青い花。薔薇みたいに派手じゃなく、少し控え目なところが彼らしいと 何故か私は思ってしまう。
そのまま見惚れるように花を眺めていると、突然携帯が『ぴぴぴっ』と鳴り出し 私は驚いた勢いのまま確認せずに通話ボタンを押した。






「はっ・・はいもしもし?」

『すみません、私ですが・・・』

「・・・・・え?!」





そのまま私は物凄い速さで窓へと駆け寄り、部屋のカーテンをバッと開け放てば
そこには車越しから小さく手を上げ、挨拶をするアポロさんの姿があった。

私は『なんで電話番号・・・』と不思議に思って彼を見つめたが、当の本人は特に気にする様子もなく平然としていた。
そして彼は自分の携帯を指差し、窓越しから見る口の動きとは少し遅れて受話器から彼の声が漏れる。






『私の電話番号です。いつでも連絡できるよう、登録お願いしますね』






そう言って彼は私に微笑み、最後に『おやすみなさい』と携帯から甘い声が響いてきた時は 思わず耳がおかしくなりそうだった。
裏返りそうになる声を必死に堪えながら、『お、・・・おやすみなさい』と ぎこちなく返事をして、
そのまま彼の車が見えなくなるまで、高鳴る胸を押さえつけながら見送った。






ただ手に持っている水色の花束が、彼に見えて仕方が無かったのは計算なのか。
花の香りに酔いながら、携帯のアドレスに『アポロさん』と打ち込む指が震えた。



























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題名は「アポロ爆笑」で良いんじゃないかとおもtt(ry←
今回・・・ていうかこれから皆ありえないぐらいキャラ崩れてきますので(寧ろもう既に遅し)

ちなみにブルースターは花嫁が持つブーケによく使われている花です。
ちなみにアポロって人は全私が萌えた理想の男性としてのyふsx(殴

ランスさんどうやって書こうかな・・・・・←←(おまえ


10/05/02

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