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夢見の部屋
浅葱色の空に包まれて

…厄介だ。なぜ私がこんな事に。
つまらないことは嫌いだが、厄介事はもっと嫌いだ。


何故この男は立ちふさがる?
私たちは別に誰かを倒したとか、何かを壊したとかそんな馬鹿げたことはしていないのに、何故睨まれる??



「いいか、逃げるなよ。逃げたら斬る。」



日頃の行いが悪かったのだろうか。
神はすべてを見ているのだな。いや、私も一応神だが。


「コソッ(どうしましょう、時雨様…)」


「コソッ(神の力もまだ当分使えそうもない…とりあえずは様子見だな)」


「……(わかり、ました。)」


「(どうした?不服か??)」

 
フルフルと首を横に振る実央。
今の年頃は難しい。何を考えているのかが読みにくくて困る。



「時雨様…」


「ん??」


だから、自分から話すのを待つ。
実央は最終的には全て話してくれる。だから焦らず待っていた方がいいのだ。



「時雨様…僕、僕…」










「お腹空きましたぁぁぁあ……」


ぐーきゅるるるる



さっきから聞こえた不快な音はこいつの腹の音だったか。あー…



「失礼、そこの黒髪の方。」



「…あぁ?」



「何か、食べるものは無いだろうか?連れが腹を空かせてるんだ。」



「……生憎、俺ぁ食いもん何ざ持っちゃいねぇよ。」


「そうか…。実央。しばらく辛抱しろ。」



「はいぃぃいい…」


ぐきゅーーー


………



ぐきゅるるるるるるる



………



きゅぅううううんんん



「なぁ。」



「…何だ?食いもんなら…」



「違う。私達はいつ、帰してもらえるんだ?これから宿を探さなくてはいけない。ここで止まるのは時間の無駄だ。」


野宿だけは避けねば。実央が叫んでこっちまで眠れなくなる。それだけはごめんだ。

眠ることは誰にも邪魔されたくはない。



「さっきも行ったろ…。ここは、通せねぇ。」


「ど、どうしてですか!?」



実央、復活…とまではいかないが、空腹に慣れたのだろう。しゃべれる程度にはなった。

…うつふせのままだが、そこは仕方ない。



「君たちはね、見ちゃいけないモノを見ちゃったんだよ。」


「お前らは悪くねぇけど…ここでハイ、さいならってわけにはいかないんだよ。」



…また増えた。しかも一気に二人も。



「はぁぁあぁぁぁぁぁあ」


「し、時雨様…(苦笑)」



「つき合ってられるか。行くぞ、実央。」


「え、あ、えと、はい!」



早く布団で寝たい…私は夜行性じゃないんだ。
この時間はいつもなら寝ている。

いっそ石の上でも屋根の天辺でもいいから寝たい…



ヒュッ



「さっきも言ったはずだ。逃げれば、斬る。」


あぁ…しつこい。しつこいのはつまらない。
つまらないと、眠くなる。あぁ眠い。



「…邪魔するな、私は眠いんだ。」



「眠いっていわれて帰しちゃう馬鹿は新選組にはいないよ??」



「つまらない掛け合いをする気はない。さっさと開放してくれないか。」



「だーかーらぁー、帰してやりたいけど…無理なんだよー…」



「な、何でですか!僕達はただ、襲われただけで何もやってないのに…!」



「襲われたことが問題なのだろうな。」



「「「!!!」」」



当たった、か…
ふむ、くじ引きで当たったタワシよりもうれしくない。



「…その通りだ。だから帰すわけにはいかねぇんだよ。」



ほら、こうなる。実につまらない。


「…私達は、何をすれば帰してもらえる?」



「時雨様?!」



「へぇ、話が分からないわけじゃないんだね。」



「とりあえず、話を聞きたい。一緒に屯所まで来て貰う。」



歩かねばならないのか…めんどくさい。だが…
ここで断ったらもっとめんどくさくなる。か…

仕方ない。


「わかった。言う通りにしよう。実央も、それでいいな?」


拒否は許さないという意味を込めて名前を呼んだらぴくりとはねて小さく「わかりました…」といった。



さて、こいつらは私の暇つぶしになるだろうか??



楽しみにしてるよーーー………



あれ、こいつらなんていう組織だっけ。
記憶力が無いと不便だ。


「失礼だが、お前たちの組織名は何だ?」



「うわ、ひっでー!さっき言ったじゃん、新選組だよ新選組!!」



新選組。しんせんぐみ。新鮮な魚が食べたい。じゃなくって。



「新、選、組……」



さっきの、女鬼ー…もといハムスターちゃんがいるところか。なる程……



「面白くなりそうだ。」




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