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夢見の部屋
やがて雨は赤く染まる
ふぅ、食べた食べた。主に実央が。


一体どこに入っていくのだろうか。軽く百本は平らげた。

…三色団子を。
カロリーは軽く千を越えるだろう。


途中まで対抗して食べ進めていたが十本で限界がきた。


「時雨様、全然たべてないじゃないですか!!」


「お前が食べ過ぎなんだ。」


「えー、これでもおさえた位ですよ??」


…あぁ、それもそうだ。神界では団子なら千は必ず平らげていたことを忘れていた。
実央の体はどうなっているのだろう。
……すごく今更だが。


「わ…もう真っ暗ですね。」



この茶店に着いたのが夕時。そして今は月がこちらを照らしている。
どれだけの時間がたったかお分かり頂けただろうか。約三時間だ。


「そろそろ宿でも探すか。」


「え?!今からですか?こんな暗くちゃ無理ですよ!」


「野宿したいか?毛虫出そうな森の中で。」


蜘蛛もいそうだぞーとうねうねジェスチャーをしてみる。実央は虫が大の苦手だ。
白い顔が更に青白く変化していくのが暗闇でも分かる。


「いいい行きましょうさぁはやく!!!」


「あ、ミミズ。」


「きゃぁぁぁあああ!!!」


女子か。


遥か彼方へ猛スピードで駆けて行った。まったく、身体能力が爆発的なのも程々にしてほしい。


「さて、追いかけるとするか。」


気配でいくと…あっちか。

さらに暗いな。そして狭い。虫よりもお化けが出そうだ。お化けは嫌いだ。見えないからな。つまらない。


「ヒィーーィヤッハッハッハァ!!!」


…何だ?こんな夜に、大声とは迷惑な。

…よく耳を澄ますと、微かに悲鳴のようなものも聞こえる。助けて、助けて、と。


「まさか、実央か…?」


違っていてくれ。そう願いながら先程よりも早く速く駆ける。何かとぶつかった。呼び止められた。

いくな、そっちは。

知るものか。そんなこと。構わず早く速く駆ける。


何か見えた。白い髪。赤い羽織。そして、それよりも赤い目…

鬼…?いや、あんなに汚れてはいなかった。
じゃあアレは一体…?


「時雨様!!」

!!!


「実央!」


よかった。生きていた。

ほっとため息をつく間もなく、赤いやつが襲いかかってきた。


「血ィ…血をよこせェェエ」


「血ィ……血ィ!!」



…化け物、という呼び名がよく似合う。
流れ的には、ここで勇ましく立ち向かった方が良いのだろうが…


あくまでも私は、戦神ではない。
私は毘沙門天だの弁天様だのそんなたいそうなものではないのだ。立ち向かえ?無理がある。


「実央、逃げるぞ!」


「はい!!」


自慢ではないが、私は逃げ足 [だけ]は速い方だ。実央には劣るが。

ここは逃げるのが得策だろう。意気地がない?
言ってろ、阿呆。

細い道をかいくぐる。くそっ思うように走れない。
でも大丈夫だ、あいつらは別の道から出て行ったようだ。


そこで気を抜いてしまったのが失敗だった。

人だ。
浅葱色の羽織を着た、長い黒髪の男。

しばらくは、お互いに睨み合い、やがて男は目を空へやり、何かを叫んだ。仲間を呼んだようだ。


この隙ににげよう。
そう実央とアイコンタクトをとったその時。

男が言葉を発した。




「悪いが、ここは通せねぇな。」

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あきゅろす。
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