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夢見の部屋
雨はまだやまない
ちゅん ちゅんちゅんちゅん

ちゅんちゅんちゅんちゅんちゅんちゅんちゅん


雀のさえずり…とはもはやいえない騒がしさで目を覚ました。

ここはどこだろうか?

まったく、この時巡りで厄介なのは、到着する場所をセット出来ないところだ。実にめんどくさい。
 

ちゅんちゅんちゅんちゅんちゅんちゅんちゅん


ここには雀しかいないのだろうか?

辺りを見回してみる。

…雀しかいないな。人1人さえもいない。


「グースー」


…前言撤回しよう。こいつ(実央)がいた。

それにしても、よくもまぁ安らかに眠れるものだ。
雀につつかれているというのに。 

起こすか?…いや、止めておこう。


実央は起こすと暴れまくる。一度、ひどい目にあった…
まだ命は愛しいからな。起こさないでおこう。


とりあえず…人の居るところまで行くか。


「…移動(ムーヴ)!!」


ちゅんちゅんちゅんちゅんちゅんちゅんちゅん


「…あれ。」


おかしいな…力が使えない…

……あ、そうか、時巡りのせいで力を使い果たしたのか…


「めんどくさ…」 


歩くことは嫌いじゃないがめんどくさい。
だがこのままだとつまらないのは確かだ。

わざわざ人間界へ来て、雀のスケッチでもしろというのか、つまらない。

 
仕方ない、歩くか。


スタスタスタ…ピタッ

クルッ

危ない危ない、実央を置き去りにするところだった。

もう少し気づくのが遅かったら頬に穴が開いていたかもしれない。


可哀想に、真っ赤っかになっている。頬が。


「よいしょっ…」


実央をおぶってまた歩き出す。

実央をおぶるのは久しぶりだ。
最近は恥ずかしがって抱っこもさせてくれない。

最初の頃は、行くとこ行くとこついてきて、だっこやおんぶをせがまれたものだ。なつかしい。


「重くなったものだな…」


あの頃は人差し指で持てたのに、今では片手を使わなければ落としてしまう。

人の成長を見るのは好きだ。面白いから。


「ん…」

実央が起きたようだ。ごそごそと背中の上で動いている。


「おはよう。」


私が挨拶したと同時にピタリと動きが止まった。

………………………………………

「し、しししぐれさま??!!」


「約7秒たったな、よく眠れたか?実央。」


「お、おおおろして下さい時雨様!!!」


「そうか、よく眠れたか、よかったよかった。」


「人の話をきけぇええぇ!!!」


ー10分後。


「………………」


「実央ー。」


「…………はい。」


「ほっぺた、痛くないか?」


「……痛いです若干。」


「足も痛くないか?」


「痛くないです若干。」


「てことは痛いんだな。」


「!?」


「安心しろ、もうおぶらないから。
 あそこの茶店に入ろう。疲れたしな。」

「時雨様……ありがとうございます!!」


スタスタスタ


「(…茶店って、どこにあるんだろう?時雨様は迷いもせずに歩いているけど…。)」


「ここだな。行こう。」


「えっ?!ちょっと待ってください!ここってホントに茶店なんですか?!」
  

「当たり前だろう。ほら、あそこに看板があるじゃないか。」


確かにあるんだーほら、あそこ。でかでかと書かれている。



新選組、と。

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あきゅろす。
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