小説 8 「おい、どこ行くんだよ!」 ご主人の、悔しいことに裾の長いズボンが走りづらい。 首周りも合っていないから、肩がベロンと曝け出されてしまっている。 「黙ってついて来い」 「引っ張んなっ!腕痛いって!」 「……ここでいいか」 グイグイと腕を引っ張られて連れて来られたのは、大きな通りから結構入った所にある路地裏。 割と拓けた空間で、こんな場所が家の近くにあるなんて知りもしなかった。 「ここ、何なんだよ」 「俺達の溜り場だ」 「俺達?」 「ああ、俺の…仲間、だな」 仲間? こいつ、いかにも悪そうな見た目をしてるから、もしかしたら不良仲間か何かかな… 「てか、こんな所に連れて来て何する気だよ」 俺はまだ、ちびの件のショックが抜けきれてないってのに。 「お前…さっきはよくも俺様の足を踏んでくれたな」 「はぁ?」 足? そんなもん、踏んだ覚えはないんだけど。 「お前のでかい身体で踏み付けられて、俺様の美しい足に傷が付いちまった」 [前へ][次へ] [戻る] |