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小説




大体、殺したって死なないような能天気なヤツだったくせに。
たった十日前に、俺のことを足腰立たなくなるくらいに抱いたくせに。


……そうか、これはあいつ自身が仕組んだ悪戯か。
おばあさんまで巻き込むなんて、今度しっかり叱ってやらないと。
俺の表情にあまり変化がないからって、ドッキリでも仕掛けて驚いた顔が見てみたいっていつも言ってたもんな……






けれど、一ヵ月経っても二ヵ月経っても“今度”は訪れなかった。
俺が留守にしている間にあいつがやって来てもいいように、不用心を承知で部屋の鍵はいつも開けておいた。
半年が経った頃、もしかしたらあいつは俺に飽きてしまったんじゃないかと思うようになった。
後腐れがないように、死んだなんて嘘を吐いて、俺から離れようとしたんじゃないかと。


事実なんて、あのとき掛かってきた番号にリダイアルすれば、すぐに確かめられる。
だが、俺はそうはしなかった。
事実にしてしまうには、あの電話は恐ろしすぎた。


俺に出来るのは、ただただあいつの訪れを待つことだけで。




気付けば、また、蝉の鳴く季節がやってきていた。





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