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小説




あまりに、突然だった。


高校も学年も違った俺達に、共通の知り合いはいない。
一緒に出掛けた際、何度かあいつの友達に遭遇したこともあるが、俺の知らない話題で盛り上がる彼らの輪の中に入っていくことは出来なくて、仲良くなるなんて到底無理な話だった。


だから、それまで三日と開けずに顔を合わせていたあいつと突然連絡が取れなくなっても、誰かにその理由を聞くことが出来なかった。
携帯は、繋がらない。
あいつの家には、行ったことがない。


そして、ツバサが姿を見せなくなって十日が経った頃。


知らない番号からの一本の電話。
相手はツバサの祖母と名乗る人物で、あいつの携帯の発信履歴に俺の名前が沢山あったからと切り出し、次には。



「あの子、死んじゃったの…」



その瞬間、頭の中が真っ白になり、俺は思わず電話を切っていた。
すぐにまた携帯が鳴り始めたが、その音を耳を塞いで遮断した。


駄目だ、駄目だ、電話を取っちゃ…。
今のは何かの間違いだ。
誰かの、質の悪い悪戯だ。
今彼女の手元にあいつの携帯があることを疑問に思おうと、電話口の声がこれ以上ない程に震えていようと、信じることなんて出来ない。


そんなこと、信じたくもない。


初めて身体を繋げたときにも聞いた蝉の鳴き声が、耳を塞いでいても脳内に流れ込んでくる――





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