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小説




それが、始まり。


その日からあいつは、自分好みのエロ本を見つける度に、俺の家に押し掛けてくるようになった。
あのときエロ本を買おうと思ったのは、デッサンの資料にするためだと言い聞かせても、あいつは「とかなんとか言っちゃって、結局のところは好きなんだろー?」と、耳を貸そうともしなかった。


まぁ実際、そんなのは言い訳に過ぎなかった。
自分から提案したことではあるが、誰かと一緒にエロ本を見るというのは、想像以上に恥ずかしい行為だったから。


そう、初めは“誰かと”。
でもそのうち、“あいつと”エロ本を見ることに耐えられなくなっている自分に気が付いた。


嫌いになった訳じゃない。
エロ本も、あいつも。
むしろ、その逆だ。
女の裸を見て騒ぎ立てるあいつを、見ていたくなくなった。


何をどう間違ったのだろう。
正真正銘男のあいつを、同じ男であるはずの俺は――


好きになって、しまったんだ。






転機が訪れたのは、あいつと知り合って3ヵ月が過ぎた頃。
蝉がミンミンとうるさく鳴きわめく中、いつも通りうちにやってきたツバサは、いつもとは違う物を手にしていた。



「スゲーの見つけたんだけど!」



あいつが持っていたのは、いわゆるゲイ雑誌。
内容はかなり衝撃的で、男が男のモノをしゃぶっているところや、それ以上の行為に及んでいるショットまで掲載されていて、こんな物が世に出回っているということに驚きを隠せなかった。





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