小説
9
「……そりゃ初対面であれだけインパクトあること言えば、嫌でも覚えてるだろ…」
「ん?」
「ん?じゃねーよ。あの告白のことについて、何も聞かれなかったのか?」
「聞かれてない。だから、彼女になってもらうにはどうしたらいいかと佐川に聞いてるんだ」
「“だから”って何。……いや、もーいいや」
今の佐川は、あのママさんコンビニ店員と同じ顔をしている。
もうすぐあくびも飛び出すかもしれない。
この話題、佐川にとってはくだらなかっただろうか。
整った容姿とちょっぴりワルという付属要素のおかげで、佐川はかなりモテるようだ。
きっと、彼女なんて寝ていたって出来るのだろう。
現に、佐川はよく寝ている。
「…メアドは聞いたか?とりあえずはメールから始めるのが無難だろ」
「携帯は持ってない」
「へー今時珍しいな、ホアルン?さん」
俺でもまだ「李さん」と呼んでいるというのに、「華倫さん」。
……けしからん。
それは後々注意するとして、まずは誤解を解かなければならない。
「李さんじゃなくて、俺だ」
「は?」
「携帯は、持っていない。俺が」
「はぁ?今時ありえねぇだろ!」
何故李さんには“珍しい”で、俺には“ありえない”なのか。
理不尽だ。
そもそも、電話なんて一家に一台あれば、十分な代物だと思うのだが。
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