小説
6
「で、どう思う?」
「……何が」
昼休み、俺は屋上に弁当を持参して、気持ち良さげに寝入る佐川の隣に腰を降ろした。
弁当を食べつつ佐川の寝顔を観察する。
髪が傷み気味なのは残念だが、造作の整った男らしい顔立ちだ。
程なくして彼が目を覚ましたところで、今日も相談を持ちかけてみた次第である。
「どうすれば李さんに彼女になってもらえるだろう」
「……リーさん?」
「佐川もこの間会っただろう。コンビニ店員の李さんだ」
「いや、あの人のことだってのはなんとなく察してたけど……リーさん?」
「李華倫さん」
「ほ、ほあ…?」
「ホアルン。リーホアルンさん」
佐川、意外に覚えが悪い。
俺なんか一発で覚えてしまったというのに。
「日本人…じゃない、よな」
「台湾出身だ」
そう、俺の心を奪ったあの美しい人は“大和”撫子ではなかった。
見た目は大和撫子そのものだが、彼は台湾から来た留学生だったのだ。
「……まぁそれは一旦置いておくとして…お前さっき“彼女”って言ったけど、あの人が男ってことは分かってんだよな?」
「確かに李さんは綺麗だが、女には見えない」
「そっか、それならよかった…のか?……つーか、兄貴といいこいつといい、なんで男に――」
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