小説
4
「例えばさ、去年同じクラスだった高木幸子。お前、あいつに昔何て言ったか覚えてるか?」
「何か言ったか?」
そういえば、佐川とは去年も同じクラスだったことを思い出す。
高木というのは、以前俺が好意を寄せていた女子だ。
黒髪ストレートのロングヘアーで、俺はいつも斜め後ろの席から彼女を見つめていた。
ああ、今時珍しい綺麗な黒髪だ、と。
見た目はまさに大和撫子。
だがあるとき、彼女はスカートを履いているというのに椅子に片足を立てて座っていて――
「『パンツ見えてるぞ』」
「ああ…言ったな」
自分でも忘れかけていたことを、佐川はよく覚えてるなと思いながら、俺はそのときの記憶を掘り起こす。
と言っても、その後の出来事なんて、たった数秒にも満たないもので。
――バチーン!
「思いっきりビンタされた」
「当たり前だろ」
「変態とも言われた」
「当たり前だな」
そうか、あれは言ってはいけない台詞だったのか。
何でも正直に言うことが必ずしも正しいとは限らないんだな。
でも、俺にしてみてもあれは結構ショックが大きかったのだ。
大和撫子だと信じていた人物が、人前でパンツを丸出しにするなんて。
「まぁ、そういうことだよ。女ってのは繊細だから、些細な一言でも傷付くことがある。見たまんま、感じたまんますべてをストレートに口にしていい訳じゃないってことだ」
「なるほど」
パンツ丸出しでも女子は繊細なのか。
思っていた通り、やっぱり佐川は頼りになる。
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