小説
3
それはともかく、分類するなら不良というカテゴリーに属する佐川との話の種は少なくて、なんとなく持ちかけてみたのがこの話題。
沈黙が気不味かったのとはまた違う。
この佐川達也という男は、見た目に反して頼り甲斐のある雰囲気を持っているから、意見を聞いてみたくなったのだ。
「何、澤木ってばモテたいの?」
「モテたい訳じゃない。彼女が欲しいんだ」
「へー、ちょっと意外。澤木ってそういうことに興味ないと思ってた」
「そんなことはない。俺だって普通の高校生だぞ」
そう。
だから普通の高校生のように、これまでに何度か恋をしたことだってある。
どうやら俺の好みは大和撫子タイプらしく、好きになった女子全員が黒髪色白の繊細そうな外見をしていた。
「まーそうだよな。で、なんで彼女が出来ないか、だっけ?あー、澤木とは普段あんま話さねぇし、はっきりとは言えねーけど…」
「けど?」
「お前、正直すぎる」
正直。
なんとも意外な言葉だ。
正直って普通は誉め言葉じゃないのか?
にしても、はっきり言えないと断っておきながら、随分はっきりと言い切ったな佐川。
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