小説 6 「……おい」 「は?」 ――バキィッ! 581番が突然彼らの一人に殴りかかった。 「っいってぇ!!なにすんだテメェ!」 「…うるせぇんだよ。ごちゃごちゃごちゃごちゃ」 「くそっ!おい、コイツボコるぞ!」 ――バキッ! ――ドカッ! ――ゴスッ! 581番を囲って殴る蹴るの暴行を加える。 しばらくしてやっと、周りで見ていた囚人の一人が看守を連れてやってきた。 「おいお前ら!何やってんだ!離れろ!」 「げっ安藤ちゃん!」 「チッ逃げんぞ!」 「コラ待て!!…クソ……あれは893番のグループだな…。おいお前、大丈夫か? …っ!大輝!?」 始めは倒れているのが誰だか分からなかった安藤だが、近付くにつれてそれがここ数日自分の頭の中を占領していた人物だと気付く。 あまりの驚きに、つい二人きりの時のみ呼んでいる名前を口にしてしまった。 「…っ581番!聞こえてるか!?581番!!」 「……安藤さ、ん…」 「よかった…今すぐ医務室に運んでやるから…。誰か手伝ってくれ」 「あっはい」 その場にいた囚人達の中で一番体格の良い者が名乗りをあげ、581番は彼に背負われてそのまま医務室に運ばれた。 [前へ][次へ] [戻る] |