小説
2
正規練習は夕方からの三時間、朝練は早朝六時から二時間強。
加えて土日も朝から夕方までのみっちりスケジュール。
暇さえあれば自主的に筋トレやランニングに勤しみ、元々ガタイの良かった身体はますます逞しくなった。
……が、彼女は出来ない。
モテたい願望を捨てた俺に新たに芽生えたのは、彼女が欲しい願望だった。
ナンバーワンじゃなくてもオンリーワンに…という趣旨の某有名曲は、今一番のお気に入りだ。
「で、どう思う?」
「……何が?」
部活終了後、これから合コンだー!と盛り上がるサッカー部集団を横目に校門を出たところ、見慣れた背中が目に入った。
同じクラスの佐川達也。
特に仲が良い訳でもない彼の背中をなぜ見慣れているかというと、それはいたって単純。
佐川の席が俺の目の前だからだ。
最近では授業をサボる日が増えているようで、目にすることも減ってきたが。
「なんで俺には彼女が出来ないんだと思う?」
「あーそういうこと」
帰り道が同じ方向ということで、俺と佐川は自然と肩を並べて歩いていた。
ちなみに、現在の時刻は午後八時手前。
佐川がこんな時間まで学校に残っていたのは、「午後の授業フケて屋上で昼寝してたら、いつの間にか夜だった」かららしい。
佐川、なかなかの強者だ。
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