小説
6
それに気付いたときには、もう手遅れ。
息子を待っていたはずの自分が、いつしか片思いの相手を待つような気分になっていたなんて。
いや、気分だけではなかった。
すでに、俺の心は亮太くんに占領されていた。
どうしたものか。
こんな、禁断の感情。
血の繋がった実の息子に、恋愛感情を抱いてしまった。
悟られてはいけない。
こんな禁忌に、彼を巻き込んではいけない。
けれど、そう思えば思うほど、彼に対する気持ちは高まって……
ついに、伝えてしまったのだ。
「君のことが好きなんだ」
と。
反応が怖かった。
軽蔑されることは、目に見えている。
でも、軽蔑されたらもう俺は生きていけない。
生きがいをなくしてしまう。
そんな俺に、彼は言った。
「別に、いいんじゃねーの?」
予想外の言葉。
俺の気持ちに応えてくれた訳ではない。
けれど、舞い上がった俺は、彼をあの手この手で言い包めて、恋人という地位を得てしまった。
俺は、亮太くんが好きだ。
亮太くんが俺のことをどう思っているのかは、正直なところよく分からない。
でも、恋人にしたいという俺の言葉を、あのときの彼は受け入れてくれた。
同情でもいい。
憐れな父親に付き合ってやっているというだけでも構わない。
俺はもう亮太くんから離れない。
離れ、られない。
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