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小説




「――…い、おい!章介聞いてんのか!?いい加減離れろって!」



――グイッ



「あ…」



離れないと誓ったそばから離されてしまった。
……いやいや、そういう意味じゃない。
精神的にってことだ。
でも、遠ざかってしまった体温がひどく名残惜しい。



「もう一回」

「ちょ…っ!」



俺から逃れられたことで油断していたのか、彼を再び抱き込むのは簡単だった。
今、亮太くんの頭の位置は、ちょうど俺の胸の辺り。
普通に立っていたとしても、俺の肩にも届かない。
亮太くんが小さいということもあるが、俺の身長にも問題ありだ。


身長、191センチ。
ごついとまではいかなくても、それに見合った横幅もある。
学生時代はバレーボールをしていたため、周りにはもっと背の高い人間も多かったが、社会人となった今となってはこの身長は結構目立つ。



(亮太くんの身長は、きっと百合子さん譲りだな…)



「おい離せッ!苦しいんだよ!」

「あ、ごめん!…ねぇ亮太くん、今日はバイト何時に終わるの?」

「……なんで」

「終わったら、またうちに来ない?」

「…っ、誰が来るか!俺は明日の課題とかで忙しいんだよ!」



そう言っていたにも関わらず、二時間後、彼は再びこの玄関に立っていた。





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